パープルワールド

店に１歩入ったら、そこは魔法の国。
薔薇の花に縁取られた黒いドレッサーが目に飛び込んできます。その上にいろどりどりのリップ、マニキュアが乗っています。誰が座るのでしょうか。パープルのビロードが貼ってある背の高い椅子もあります。デコラティブな大きい鏡もあります。石鹸置きさえこの有様。コメントも「魔法には秘密の壷がなくてはならない。フェイシャルバーにはこのディッシュでムーディーに」です。

ここは、そうアナスイの化粧品売り場です。三昔前（みむかし、三年前じゃないですよ）の私だったら、きっとこのコスメを買いあさっていたことでしょう。ほぼすべての化粧品をセットで揃えたという経歴の持ち主なのだから。
今日はヘレナルビンスタインの効きそうな化粧水につられて、1週間後には、やっぱりファンデは何といってもコーセーでしょうと、基礎化粧品はノーマルに資生堂でしょとか、いやマックスファクターとか、レモンの香りのするこれもいいね、夏だしとか、ＢＩＢＡはこれまた魅力的！とかって。しょっちゅう化粧品の袋をさげて帰っていました。よっぽどキレイになりたかったのでしょうねえ。

今でも大人としてありかなと疑問ですが、ちょっと前までマリークヮントなんかも揃えていました。近頃は多少、結構、大分、疎くなって通販でエイボンなんかを使っています。実はノエビアが1番私に合うようなのですが、人に頼まないと買えないという処がネックになっているのです。

化粧品売り場もちょっと寄りにくい構造になっているみたいです。デパートへ行ってもそんなとこでのんびりしている暇もありません。お中元やお歳暮を早く選んで子供が帰ってくるまでには家へ帰りつきたいとか思うのです。きれいな美容部員のお姉さんに肌をみせたくもありませんし、複雑な女心というところでしょうか。ファンデーションのベースの色選びから、眉の書き方や、顔型に合ったチークの入れ方、美容部員の言うことや、パンフに書いてあることなんてすべて知っているって。それでもこれがやっとだって。オイ。

フェイシャルマッサージのことだけど、昔からのマッサージ法が逆だったと知ってテレビの中の女たちは騒いでいる。目の下からこめかみ向かってというのが基本だったんだけど、リンパ液が行き場を失うとかで、リンパの流れに沿うようにこめかみ方面から目の下を通り、上まぶたを通り、耳の前当たりから首にと変わった。

一生懸命マッサージをしていた、うつみみどりなんかはあせっていたけれど、ざっとしかしていない私は・・どうでもいいわ。

アナスイはパフからコットンまでパープル。しかもコットンはボール型。
　　　


そう、店が、私に合う洋服やさんとかも見つけられなくなっているのです。どこへ行っても若者向けばかりで、と妹にも話している。妹は新横浜「プリンスペペ」にはいいものがたくさんあるよ、と教えてくれて、予算を言ってくれれば、私が好きそうなものを買って送ってあげようか、という意見まで出ているのです。

三昔前（むかし、ね）会社の帰りに毎日ホントに毎日新宿へ寄って、鈴屋、高野、伊勢丹と歩き回り、すべての洋服をチェックして今日これが増えたとか、この服は私のもの、というインスピレーションを感じたり、「新宿」を把握していたこの私が、今「店」が探せないなんて・・。

先日、私の店が見つかったわ、と妹に電話しました。

「国立の店で全部が全部すてきなの。ひとつひとつがすべてよ」

と興奮して話しました。

「上下で６万位なんだけど、こんなに気に入る店はない。ここを私の店とする」とまで言ってのけました。

妹曰く、

「６万すりゃそりゃ良いものでしょうよ。それは高いって」

「ああ、そうか」と正気に戻った私、でした。


「アナスイがつくると香りだってエッジーでヒップ。一筋縄ではいかせない。それはフローラルフルーティの洗練カオス」と香水。「ハートにグッとくる、深く濃く主張するカラー。もしかしてそれは堕天使のいたずら」とアイカラー。「ひとたびクチビルと触れあえば、いちずにグロッシー。ツヤリ、ゆらり、いつまでも」とリップ。

そして、ネイルカラーのコメントは「まるでサタンが一心不乱につくったレイヴ・カラー。欲望のおもむくままにギラリ。薔薇の香りにクラリ」です。

鏡はこうですもの。ヘアーブラシもこう。コームだってこう。ブラシ入れだって・・。

　　　　　　

先日行ったデパートのアナスイコスメコーナーは、ちょうどプライマリーセットの新発売の日で若い人があふれていました。この魅力には皆がまいるのでしょうね。ふむ。　　　おわり。