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私にはものさしがある。

2002年10月15日北朝鮮から拉致家族が帰ってきた。

青春の真っ只中で行方不明になり、24年経った人達は若者から初老になったと言われている。毎日の報道を胸がつぶれる思いで見守っている。横田めぐみさんの家族はこれでもか、これでもかと痛めつけられている。ほんとうに胸が・・もとからつぶれている、ってこんな時に冗談はよして!

 

(気を取りなおして)私にはものさしがある。

青春時代だった人達の子供が青春を迎える時期になる。老けたとか、やせたとか、この報道を見ながら、24年はどれくらいの長さなのか、のものさしだ。子供を拉致された家族には、あまりにも長いつらい日々だった事だろう。本人にもそれは気が狂うほどの、そしてノイローゼになったとされる子供を思う親の気持ちを考えると、ホントに生き地獄としか言いようが無い。

 そんなときにナンですが、今年3月にフルート仲間と再会をしていた私たちだけぜんぜん変わっていなかったというはずもないと思って・・。だってそれは奇しくも24年ぶりというものだったから・・。

「みんなぜんぜん変わっていなかった」と言い合ったものだが、なんだか心配になってきた。そこで再度確かめてみようと思った。そういう訳でもないが、前回から約束していた再再会の日が来た。のんきですみません(この展開は顰蹙もの?)。

 

「今、展望台一周したよ。おなかすいたー」

「はやいねえ。いま神田、もう少しのがまん。まりあ」

「ハーい。待ってるよー」

 

このエレベーターに乗るのは、約30年ぶりです。

フルートに興味を持った若者が遥か昔に集った場所です。

都心の夜景を見に、みんなの顔を見に、40階展望台へと登ります。

 

視界360度、高さ152メートル、一周200メートルのダイナミックな景観、どの方角にも椅子が設置してあり、ゆっくりくつろげるようになっている。そこには穴場を探し当てたカップルが数組、夜景を眺め語らっている。赤い東京タワーがひときわ目を引く。昼ならこの黒い所は海なのですね。晴れていれば富士山まで見えるとか。ところどころにクリスマスイルミネーションが飾ってあるのを見ながら、くるっと200メートルを歩き、そして途方にくれた。

 

「一周したのにいない!」

「いるよ、キリンも一緒」

展望台は照度が低くなっているので、お互い見のがしたようだ。ナント。

 

今日は彼女のご主人、手術を無事逃れたご主人も参加です。私達より上級のフルートクラスで同じ時期にレッスンをしていた人です。私は今までに3回お会いした事があります。仮名をれいじさんとしましょう(この仮名で笑えるのはわれら4人だけ、すみません)。れいじさんとキリンの会社を展望台から眺め、夜景と写真を取り、店におちつきました。

 

キリンの故郷である山陰地方の話。れいじさんが物知りで島根県、鳥取県にやけに詳しい。地名、政治家など。「えーと、あのー」と何かを思い出して話そうとしていると、「へんなこといわないでよ、へんなこといわないでよ」と心配している妻のいちごが楽しい。

携帯電話の電波の話。こういう類に詳しいキリンの講義を聞く。私はスペイン旅行のアルバムを披露しつつ、いつも「マリアチャンネル」でヒデキがステキと言っているので、Siam shadeのCDを渡し、多少うるさいと思うかもしれないけど最後まで全部聞くようにと指示を出す。 

 

「さっきからまりさんって言ってるけど、それは?」

「それはまりあ、聖母マリア」とキリン。

「あべさんだったからまりあ」といちご。

「そういえば、そんな雰囲気があるね」とれいじさん。

「これは書いとかなくっちゃ!」と心で思うまりあ。

 

「杏仁豆腐に入っていた赤いのがおいしい」とれいじさん。

「それはラズベリー」といちご。

「それはへびいちご」と私が言ったら、

「言うと思った」といわれてしまった。どうやらキリンは“シャーマン2002ジゾウ”を読んでいる?

 

お互いの家庭の子育ての話。姉妹で喧嘩ばっかりしていると言う人。下の子をどうしてもかわいがり上の子がいじける。そういうつもりはないのに昔の家庭ビデオを見たらわかったと。

長女がはずかしがってそばに近づかないと。たぶんお父さんに対してコンプレックスを持っているんだろうと私は思ったのだが、長男にお父さんからは勉強しなさいと言えない、と言う人。

「まりあのうちはどう?」

と聞かれ、そこは私が子育てで一番気を使ったことだと答えた。

 

初めて長女が赤ちゃん(次女)を見るときのことだ。夫の実家に1週間お世話になっていた夫と長女。無事お産を終えた私は病院で長女の事を思ってずーっと泣いていた。そんなに泣いては体に悪いですよと看護婦さんにも言われたほどだ。母も困り果てていた。

 

ママに電話すると言って、お母様がかけてくれたのに、電話口に出ない。そのうちウエーンと泣き声がする。電話から聞こえる泣き声を思い出してはティッシュだ。あんなにティッシュを使ったのはあとにもさきにもあのときだけだ。

 

実家に帰ってきた二人を迎えて、夫にはひとことで、長女と会話した。抱き合って泣く、ははずかしいから避けたかったし、でもこの1週間を取り戻そうとその時の私は一生懸命だった。窓から海を見ながら、照れくさそうにしている長女と話した。いい子にしてた?ウン。えらかったねえ。ウン。赤ちゃん生まれたんだよ。ヘー。ほら、おなかぺっちゃんこでしょ。アー。今隣の部屋にいるよ。エー。見に行こうか?ウン。と心をはやらせて、一緒にベッドへ走った。
 ちいさいねえ、○○もそうだったんだよ。カワイイ。と家族が増えた事を認めた一瞬です。じゃむこうでプリンでも食べようか。ウン。とまず長女と私、そして赤ちゃんという構図が出来上がった、と思う。

 

赤ちゃんだった次女の口もとに米粒がついていた。長女がおにぎりをあげたと言った。まだ食べられないからそれはだめよ。かわいがりすぎ?それからはオムツを持ってきてくれたり、仲良く遊んでくれるいいお姉ちゃんです。ま、けんかをする時期も、もちろんありましたが。

 

七五三。長女が7歳のときは1年ずらして次女も一緒に着物を着せたけど、次女が7歳のときはひとりできれいな着物を着るわけで、その時はお姉ちゃんに力を注いで可愛くする。これで平等が保たれる。きれいねえ、かわいいねえが妹に集中するのだから、姉が着古したセーター姿ではかわいそうでしょ、ってこの場合はちょっと考え過ぎ?

 

「どっちが好き?」という質問があったときのうまい答え方をお教えしましょう。

「○○ちゃん(長女)は一番大切な子、○○ちゃん(次女)は一番かわいい子」

と、これで乗りきりました。「ま、いいか」と納得するみたいですよ。

少し大きくなると「私はかわいくなくて、○○は大切じゃないってこと?」などとへ理屈も言っていましたが。

 

家計簿のメモ欄で見つけた面白い言葉をお教えしましょうか。

「ママ処女ってなあに」

「まだ男の人と抱き合った事がない人よ」

「ママと抱き合ったよ」

「それは論外よ」

「じゃ、○○は、論外と処女だ」と長女。

 

数年後、次女からも同じ質問が。

「ママ処女ってなあに」

「まだ男の人と抱き合った事がない人よ」

「お姉ちゃんは長女、○○は次女・・」

子供って面白いですね。

 

二人とも社会人になり、妹はお姉ちゃんを尊敬している様子だし、姉は妹を私より理解し、認めている。母方のおば様が言う事には子育てに終了はないとか。一生自分の子供なんだからと。ウーン、深い。こうして親も悩みながら成長していくのですね。そしてフカヒレまで、テーブルから夜景を見ながらお食事です。

 

昔とずいぶん変わってしまった駅で、何度も違う方向へ歩き出してしまい、キリンに直されながら切符を買いました。羽田空港へのモノレール発着駅だから進歩したのでしょうね。次回はスペインクラブに行きたいということで・・決定!です。

 

***

 

デジカメからパソコンへデータを取りこんで黒い写真と手ぶれの写真でがっかりしている私のもとへ、ルンルンメールが届きました。れいじさんといちごは3次会までしたようです。

『ただいま〜!今帰って来ました。駅に降りて、このまま家に帰ってしまうのはもったいないと3次会に行ってしまいました。今度は駅前の小さな一杯飲み屋です』
そしてキリンからは『写真…ウ−ン 厳しいものがありましたね。やはりフラッシュが…。次回に期待しましょう』と。
『私は作業をしていたというのに・・。しかもまっくらしゃしんばっかしで・・。二人で道草、結構ですね。たまにはそういうのもいい。子供達は泣いていなかった? イカがおいしかったまりあ より』と送りました。

 

そうしてこの日が過ぎていきました。

 

***

 

『秋もますます深まり、再再会の日が決定しました。無事手術を逃れたれいじさんを加えて、退院祝いも兼ね、お食事といきましょう。 11月30日(土曜日)。18時。アノ電気屋の正面入口でまちあわせましょう。みなさん、体調には充分気をつけてかぜなどひかないようにしてクサイ・・わらえた?   まりあ でした』

 

『日もおしせまりそろそろ予約を、と電話を入れました。30日は貴賓室に団体予約が入っているそうで・・。忘年会シーズンを甘く見てました。すみません。浜松町貿易センタービル39階。東京会館「レインボー」というのを見つけました。海を見ながらお食事。しかもあのビルです。スペイン料理ではありませんが、 

これって、いいと思いませーん?    必死の、まりあ』

 

『w(0o0)wオオー! ! なんて素晴らしいんでしょう!! 思い出深きあのビル!!私たちの再会にぴったりじゃん!!ヾ(@~▽~@)ノわ〜い、わ〜い!11月30日(土)よね?海を眺めながらなんてロマンチック〜 (u_u?)うっふん?? 麒麟もまさか反対することはあるまい。予約頼みまっせ!!』
               

『バル? レインボー、いずれでもOKだよ。 やさしい麒麟』

 

『スペイン料理からフランス料理へ。フランス料理からそして中華へと変更になります。貿易センタービル38階「離宮園」に予約を取りました。「レインボー」も団体予約が入ってました。40階に展望台があります。そこで待ち合わせはいかが?入場料\620です。食事は6時から。何時間前から来ててもいいってのはどう。まりあ』


(アレこれは前回の「冷静と情熱のあいだ」トライアングルバージョンの上を行くクァルテットバージョンでしょうか。場所は浜松町の貿易センタービルであって、イタリアのドゥオーモではないにしろ)3,648