いいお天気の日、自転車で少し遠くのスーパーへ行った。
日差しが暖かくそよ風も心地よい。知らないうちにハミングをしている。時間もたっぷりある。目を閉じた。今、私はすずめだ。犬だって散歩させられる、もしいたら。

失業率が相変わらずだ。仕事をしなくては一人前ではないという風潮があるが、必ずしもそうではないと思う。勿論経済的な理由もあるだろうが、人それぞれの考えがあってしかり。だって仕事をしているストレスって大きい。仕事中は勿論だが、早起きをしなくっちゃならないし、あれもこれもやらなくちゃならないのに家事が進まない。時間に追われる。子供が病気の時だって置いていかなくちゃならない時もあるし、郵便局や銀行へも行けない。疲労困憊の体を引きずって又朝だ。みんなこうして生きているのではあるけれど、できることならゆっくりしたい。この十年間そう思っていたことが実現した。

雪の日はタクシーで行く。雨の日はカッパを着て、夏は汗をかかない筈の私があせびちょで、冬は痛い耳を手袋で押さえて、全速力で自転車を漕いで黄色信号で交差点に突っ込み会社へ行く。朝からのんびり犬の散歩をさせている人がいる。すずめになりたい、と思った。


突然ですがここで “可愛そうなぶり大根事件”というパパの料理を紹介します。

大根は面取りをするのよぐらいのアドバイスでひとりで作っていた。おいしくできたようで、しばらくしてから暖めて食べようとガスに火をつけ、テレビの碁に見入った。そして焦がした。見るも無残に。ほら“可愛そうなぶり大根事件”でしょう。

チャーハンはいつでもすぐ作ってくれる。なべが大変なことになるが卵を落として食べる切干大根も。ゆで加減にうるさいので自分で作るソーメン。具だくさんのらーめん。会社の帰りに買物をしてくる。少し前はふわとろ、におわ納豆に凝ってたくさん買ってきていた３×８。食後のアイスクリーム、かりんとう、メロンパンも。ま、自分のためですが。
掛け布団を掛けてあげたときなど、「ん、さんきゅ」「ん、ありがと」と言われる。ごめんの時は「だってー」、ありがとうの時は「あらすてき」「うれぴー」と言う私は、反省する。



いいお天気の日、買物をした私は「専業主婦っていいなあ」と思った。夫は私が働いても働かなくても何も言わない。私の給料袋を見せると「ご苦労さん」と言う。まあ、「外の空気を吸った方がいいかも」ぐらいは言うかな。「社会の一員になっていた方がやりがいがあるんじゃない」とも言ったかも。

給料袋を渡す夫に言った。

「男は大変ねえ。こんなに長い間働きっぱなしで。私は働かないのに給料が入ってくる。いいのお。いやじゃないの？結婚ってばかばかしくない？」
といろんな質問をした。

「そんなもんだろ、あたりまえだよ」
そんな答えが帰ってきた。

ほら、ありがとうが言えない。

時間があるなら家の事がはかどるだろうって？
それがそうでもない所がおもしろいのよねえ。

ほら、ごめんが言えない。

　結婚27周年記念日に寄せて　すずめより。

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