ジレンマ　（福袋）　

お母様方はこの頃のことを懐かしく思い出す。
　子供は「パルコのこの階段、この模様、なんで覚えがあるんだろ」などと言う。

　数名のグループがバーゲン会場に到着です。機能的なもの、必要なものというよりは、魅力があるデザインかわいいもの、又は魅力があるデザインすてきなもの、などを買いあさって去る。親のセンスの発揮どころとも言える。親のストレス発散場所とも言えるかも。子供たちが幼稚園に行っている間に妹弟をつれて、又は幼稚園が終わってから全員を引き連れて、子供たちを階段で遊ばせておいて数万円の買物をし嵐のように去って行った。

　自分の洋服を買いに、バーゲンは欠かすことなく通っていた。欲しいものはつきることがない。何を買っても次に欲しいものが出てくる・・と思っていた。つい最近までは。
　そんな私が今はバーゲンに無縁になった。数年前に今回パスと思った。その後「今日からバーゲンね」と思っていたが、「バーゲンだったの？ふうん」となり、今では「いつどこでバーゲンが行われているのやら・・」とまでになった。考えてみたら家には着るものが腐るほどある。幸いなことにサイズは昔から同じという経済的な体型だし、これらを消化したっていいよなあと思い立ったのだ。半年前、夏物を出さないうちに夏が終わってしまい苦笑したと思ったら、今、冬物スカートが出ていないのに気が付いた。

　着る、以外のものは細工をしたい。すこし何かをどうかしたら、もう売っている物と変わらない魅力的なものになる。ウィンドーショッピングでそれだけを勉強して帰ってくる。しかし押入れが開かないほど前に積み上げられた服は、捨てる？リフォーム？どちらもできずに置いてある。長女に知らない洋服がどんどん増えていくのを楽しく見ている。
　
　ところで福袋は返品できない。でも中身と金額が同じ場合はできるそうです。朝から、前日から、行列を作り福袋に群がる人々。他県からも押し寄せる。エスカレーターを駆けあがる人々。お正月になるとテレビに映し出される光景です。近頃子供服に人気があるそうです。高い服が入っているったって、色とかサイズとかはどうでもいいのでしょうか。
「この店のものなら、これだっていいしこれだっていいし、どれでもいいよね」
と購入したことがある。結果失敗した。買ってから近くの喫茶店で中をのぞいた。その店にはないようなへんなストライプパンツ、黄緑色のワンピース。オレンジ色のシャツカラーのフリース。
「許して下さい」
と店に相談した。
「ホントね、ちょっとひどいわね」
と店員のお姉さんもそう言って替えてくれた。
「中を見てすきなのを持って行っていい」
と言われる。中を見てもろくなもんがなくて、例えば店にある正価のこのスカート一個でいいね。そう言いたいね、などといいながらも、ひとつ袋を選んで持って帰った。一度着たけど、二度と着ていない。

「こんなのどう？」
とフォーマルドレス売り場の店員に声をかけられた。
「あ、好きな色」
「そうでしょう、似合いそう」
もう断れません。一万二千円のショールが2つ、パープルのオーガンジーで模様が浮き出ているもの、ラベンダーカラーで幅広のシルクが縁取りされているもの、赤色のファーで八千円のショール、エナメルで二万三千円の茶系の虹色パーティバッグ、丈がはんぱなワンピース、毛皮付きの古臭いかたちのカーディガン、使えそうもないコサージュ、それらで一万円。
「トータルしたらすごいわよ」
と何回も計算機を使って、そう言われて福袋を手にした。
それらすら一度も使っていない。欲しいものをひとつ買った方が一万円の使い道としては絶対良いのだ。

でも、どうしても買えと言われたら、やっぱり「店」で選ぶ。友達が原宿パレフランス、「ヨーガンレール」での福袋に入っていたと言ったジャンパースカートが忘れられないから。でも、クリスマスにクリスマスケーキを買うのも恥ずかしい私は、派手な福袋をもって帰る事を考えただけではずかしい。

　こんな私は・・正月風景が映し出されるテレビに見入る。