リザーブ（電話）

 

リザーブは、オールドに変わって人気が出たサントリーのウィスキーですね。黒いボトルの形が目新しく結構流行りました。昔むかし新宿にあった、バイキング形式のカンタベリーハウス、ディスコ併設のチェック（懐かしい人もいるはず）などで、ボトルキープと言えばコレ、という時期があって夜遊びにつきものの酒でした。

「ワインを置いてない店だけど、頼んでおく？」
「リザーブしておいて、よろしく」


町田康は作家でありミュージシャンです。その彼曰く予約は地獄だ、と。何通もの電話地獄だ、と言う。
『たとえばまずベーシストに電話して、今月の何日から何日の間で都合のいい日を教えてくれと訊き、これを紙に書きとめ、決定したら今一度電話をする、といって電話を切る。この段階で候補日が７箇日あったとする、そしたら、今度はドラマーに電話して、その７箇日のうちの都合のいい日を訊く。候補日が３箇日になる』

苦労は幹事の宿命だ。全く日にちを合わせるのは大変だとも思うが、自分の予定に合わせることが前提なのでホントは一番楽なのかもしれない。そして写真係もしかり。　自分が半眼のものやへんなカオしているものは省くことができる。焼き増しをして人に配らなくて済む。これは人任せにはできない重要なことだ。まりあは必死でこの作業をしてきた。でも１００枚に２枚ぐらいしか気に入った写真がないことがわかり、近頃はもうどうでもよくなった。雰囲気が解ればそれでオッケイです。

町田康続けて曰く、
『それから次はギタリスト、キーボーディスト、と、順次電話をして、今度はスタジオに電話をして最終的に絞られた日を予約してそれからいま一度全員に電話をして決定した日にちを伝える。という手順を踏むのだけれども、この段階で自分は、合計九本も方々に電話をかけている計算になるのである。』


「４月の最初の土曜日、みなさまいかがでしょうか」
私から幹事を引き継いだ３人目、Ａさんの場合。新年会という計画は皆にいろんな事情が発生し、４月になってももたついている。珍しく私も都合が悪い日があり、調整を願い出たりした。花見時期のマリアは忙しいのだ。

「５月１日　土曜の都合はいがなものかな？」
幹事から何度目かのソフトな伺いが来る。夫はゴルフの幹事で四苦八苦だ。日程は決まっているとはいうものの、宿泊所の手配あり、宴会や車中の飲み物食べ物の手配あり、そしてキャンセルありで何度も人数変更を宿に伝える。ゴルフ前から疲れている。


『しかもこれはもっともスムーズに事が運んだケースであって、こんなうまくいくことは、現実にはありえない。振り出しにもどることもある。』
そして町田康のかける電話は１３本、２２本、５０本とパターンが続く。町田康はさらに言う。
『そして現実はさらに過酷で、最初の段階で、皆が在宅していて、以上のような経緯をたどるのであって、実際にはみんながそうやって家にいて自分の電話を待っているわけでもないので、前後ロスがあり、その間、各人のスケジュール、スタジオのスケジュール、ともに埋まっていくので、ますます、つらい自分は、コンサートが近づくと、スタジオ予約のために、終日、電話のところで死ぬ思いをする。うくく。』


「５月１日　土曜日６時２０分西国立駅集合です。わからない方電話下さい。出席欠席の返事下さい。○○さん、ワイン頼みました。みなさま楽しみに待ってまーす」
こちらは、どうやら治まった様子だ。皆の予定が合い、わがままな人（まりあ？）への配慮（ワイン？）もし、やっと決行されるのです。そしてこーんなおまけつき。最後に本音を漏らした幹事３号。

『＜お願い○町＞おはようございます。携帯を初期化してしまいました。皆様の携帯電話�ｂ�おしえてください。○坂、○塚、○島、○田、○水（敬称略）お願いします。○○』
『＜かしこまり○坂＞だいじょぶですかー？みんなまとめてめんどうみよう。○坂まりあでしたー。携帯電話番号５人分。以上』
『＜ＲＥ：かしこまり○坂＞ありがとさん。ちくしょ〜！　たいへんだよ。』

『みなさま、今度の土曜日ですよ。おわすれなく。しみちゃんに何度も電話してもつながらないし、メールしても届かないみたいです。どなたか昼間連絡してください。よろしこ。○町』
『しみちゃんに連絡つきました。来るかどうかは当日のお楽しみ。どっちかと言うとムリ。あさこさんによろしくと。まりあより。』
『ありがとう。どうして連絡とれるの？』
『普通に電話しただけ。元気だったよ。まりあでした。』

６４０円かかったけど・・。