イメルダ(妹) パターンA


その日、私はエメラルドカットのきらめきに目がくらんだ。恵比寿ガーデンプレイス、ショーウィンドウのダイヤモンドリングの前で立ち止まった。指できらめきを確かめ、値段を見て立ち去った。


ー婚約時代、お誕生日にはルビー、エメラルドなどの指輪を買ってもらっていたー
ー夫はお誕生日には花とケーキとワインを買って帰る。それはウン十年経った今でも続いているー
私と2才違いの、そんな妹は
街に出た時にはステキなアクセサリーを探すと言う。ちょっと値が張るものでも又安いものでもアクセサリーに関して自信があり、並んでいる中でもいいもの、ステキなものはすぐわかると言う。妹は趣味で集めているうちに貴金属をみる目が肥えたようだ。


などと妹の話は次の文に出てくる。
『2001ウィザード』ザスピリットオブアデッドパーソン(金縛り『2002シャーマン』「クラシカルコンシエルト」(クラリネットと妹)「パープルワールド(アナスイコスメ)「プラチナチケット」(アンコール&ウェーブ考)「ヒューマンビーイング」 (ボランティア)『2003ペルピニアン』「イギリスミステリーツアー」(上野)「サングラス」(マリアのエステ)『2004マシャ』「バーチャル」(探訪)「フルモンティ」(新宿ACB)



大きな黒いジュエリーボックスにはイヤリング、ネックレス、ブローチ、そして指輪がぎっしり入っている。10数万円の漆のブローチは近頃勇気を出して購入したものだ。ジュエリーボックスに入りきらない整理していないものも袋に入れてたくさんあった。長い時間をかけてひとつひとつ吟味して満足し買い集めてきたものには思い出もある。それらをみると幸せな気持ちになった・・・と言う。その中でも一番高価なものはなんといっても婚約指輪だ。ダイヤモンド選択の基準に4Cというものがあるが「カラット」「カラー」「クラリティー」「カット」など最高級のもので高島屋には今でもその写真が保存されているそうだ。私もそんな妹の為にスペインのお土産として十字架や琥珀のペンダントを買ってきてあげたものだ。


私の宝石箱はちゃらい。本物は少ないし婚約指輪もない。そして紫色が多いのが特徴だ。ショップチャンネルで買った映画タイタニックのペンダントとイヤリングでしょう、中国で買ったアメジストのブレスレットでしょう、スペインで買ったガラスのネックレスでしょう、これまたショップチャンネルで買ったでっかい色石のリングでしょう。
フランクリンミントで購入したジャクリーンオナシスの3連のパールネックレス、母からもらった甲府土産の水晶のネックレス、夫の勤続何周年かでもらった金とプラチナのネックレス、お友達の店で買ったルビーの指輪などもあることはあるのですが、あとはむっかしからのおもちゃもどきのものたち。こわれたり片方だけになったイヤリングやピアスも。さりとてこれらは捨てられないものとしてずーっと置いてある。わたしにとっては思い出もあるやはり宝物なのですねえ。


「三千足なんてもっていません。千六十足です」 
元フィリピン大統領夫人として悪名をとどろかせたイメルダ・マルコス膨大な靴(シュ−ズ)のコレクション。品目はピンヒ−ル、上靴、部屋ばき、モカシン、サンダル、プラットフォ−ムシュ−ズ、パンプス、ロ−ファ−、ラウンジャ−、オ−バ−シュ−ズ、ボタンアップ、エスドリ−ユ、ハイヒ−ル、メリ−ジェ−ン(エナメル革のロ−ヒ−ル)、テニスシュ−ズ、ゴルフシュ−ズ、乗馬用ブ−ツなど。


フィリピン、イメルダ・マルコス元大統領夫人から没収した宝飾品コレクションをマルコス政権が1986年に崩壊した以来初めて報道陣に公開した、という記事が今日の新聞に載っていた。大きなダイヤモンドをあしらったイヤリング、ブローチ、ブレスレットのセット(148万ドル相当)や親指大のルビーのペンダント(29万ドル相当)、真珠をちりばめたティアラなどがあるそう。コレクションは全部で760点あり、11月にはジュネーブで競売にかけ、1000万ドル程度の売り上げを見込んでいるという。

『私の妹は家族から“イメルダ”とよばれているそうだ。それは靴に限った事ではない。アクセサリー、スカーフ、バッグ、食器、飾り物、と金に飽かせてなんでもいっぱい集める。どっさりあるアクセサリーの中から、遊びに行くたびにすこしづついただいて帰る私。スカーフもコレクションを見せてもらい、「わあ、これすてき」と言うと持っていきなさいとくれる。せっかく集めたものなのに気前もよい。まさにイメルダ夫人?』
『2003ペルピニアン』「コレクション」(イメルダ)より


エンディングストーリー、遺言を考えた。ここに記載しておくことにする。状況に応じて変わることもあるだろうが臨機応変で。桃井かおりはお友達のリストも作り、天使の扮装の遺影も用意し、細かい事を記したファイルが本箱の何番目かにおいてあるそうだ。当日の酒やお料理まで指定している。美味しい寿司屋に頼んでいるそうだ。うちは茶月で・・・。

財産明細    自宅マンション処分&手続き(義弟)
負債明細    ローン残あり(義弟精算)
家財処分    (イメルダチョイス以外茨城へ又は処分)
着物・宝石    あるとすれば(イメルダ)
貯金        あるとすれば(義弟)
伊豆の別荘  (イメルダ)
伊豆の寺関係・維持
『2003ペルピニアン』「ロイヤルマザーリポート」(五枚のはがき)
軽井沢の別荘、車、ゴルフ会員権など(あれば義弟)

葬式関係 夫、あり   葬式費用(義弟)
       長女、あり  葬式費用(義弟)
       私、なし    喪中ハガキで知らせる。
       (知らせる人は年賀状リスト(パソコン)参照)
       (遺影 手紙セットの中に夫婦2人分ある)
生命保険 夫のみあり
墓関係   茨城
墓碑銘   全員戒名はいらない。私は必ず“まりあ”で。
       以上。よろしこ(17・0716)



トパーズのカフスボタンをパピに、アメジストのリングをマミにプレゼントして妹は結婚した。私にダイヤモンドのピアスをと言ったけどおじけづいた私は何度も遠慮した。そんな高価なものを妹に買わせることにも申し訳なく思ったからだが
、そういう気持ちからだったのかと気付いたのですら数年後だった。
私の結婚後3人になった家族、妹は両親と駅前の焼肉屋で最後のお礼の食事
もしたそうだ。そして思い通りの豪華な結婚式をして、妹は彼と二人でその支払いをしていた。私はといえば結婚式費用も親に出させ食事会もせずお礼すら言わずうかれて家を出たものだった。

横浜方面で近頃、中国窃盗団が横行しているそうだ。警察は懸命に捜査し、追い詰めているところだと言う。「ウチはベランダの鍵も掛けないし窓を開けっ放しで出掛けたりもする」と言ったらおこられた。

その中国窃盗団が妹の家に入ったとしたらー。


「パパはオメガの時計だけで自分の大切にしているマーチンのギターなどが無事だったから安心しているし・・子どもは香水やノートパソコンを持っていかれたけど、パソコンは買ったばかりなので保証されそうだと安心している。私は趣味で集めていた貴金属をすべて持っていかれたー」
とちょっと涙声で電話がくるのだろう、か。
「カメオのブローチもあったのにごめんね」
新婚旅行のお土産で私からもらったというものがあったと、すっかり忘れている私は謝られるのだろう、か。

だんなのお母様も妹が気落ちしているだろうと心配して電話もできなかったりするのだろうか。私も、これから始めなさい、と言ってもうひとつあるスペイン土産の琥珀のペンダントをプレゼントするのだろうか。


家族全員が留守中の夕方に、もし、入られたとしたらー。

マンション一階のベランダのガラスを破って入られたとしたらー。