結界（ポイントカード）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ポイントカードはありますか？ありません。

ポイントカードを作りませんか？結構です。

そこへ行くと言われる言葉「ポイントカードはありますか？」そのたびに「いいえ」と答えるのが常だった。何度も言われ勧められてついその気になっても「じゃお願いしましょうか」「エスカレーター脇のインフォメーションセンターに行ってカードを作ってそれから・・・」「じゃ、今日はいいわ、又にしましょう」こちらは行く所があり急いでいるのだ。そこまでして作ろうとは思わない。

買い物をし、食事をし、花を買った今日はその気になった。ひとつ作ってみようじゃないか。花屋に教えられたエスカレーター脇のインフォメーションセンターに行ってポイントカードを申し込んだ。

名前や住所や趣味など（ちなみに読書と旅にしました）を書きこみカードをもらいました。

「今日の買い物が終った店に戻ってチェックをし直してもらうといいですね」と言われた。そのポイントを集めるとどうなるのかそして今何点なのかカードを見てもわからないが、

「そんなはずかしいことやめようよ」

「できないよね」

「次からにしよう」

「でもカードが出来たんだし、ついそこの店だし・・私行ってくる！」

さっきへビ皮のカードケースを見つけて購入した店の前に来て決心した。かばんの棚をくぐり抜け奥まったレジまで行くとさっきのおじさんがいた。

「今カード作ったんですけどスタンプ押していただけますか」

「はい、いいですよ。さっきのは本物の皮だしブランドだしよかったね」

「はい、ありがとう」

「しかも今日はポイント5倍だよ」

ふうん、5倍か。そんな日にはなかなか当たらないよね。

「うどん屋行く？」

さっきうどん食べた店に戻ってポイントカードだけもらう、そんなはずかしいこと絶対出来ない。違う店員さんだったら話が通じなくて店中が大騒ぎになる可能性もある。そんなみっともないこと・・・だめだ。

「どうする？」

「やめよ」

「・・・でも5倍」

『結界』とは仏教から来たもので、聖なる領域と俗なる領域を分ける境界のことを意味するが、一度その結界を超えてしまうと、ころがるように・・・ダメだと言いながらうどんやに近づく二人。

「よし、いく。あんたはここで待ってな」

夫をこんなみっともない事に参加させるわけにはいかない。私一人で暖簾をくぐる。

「すみません・・あの、カードを作ったんですけど今日のレシートを持って回れと言われたもんで」」

テレビカメラかセンサーがあるらしく奥まった厨房からいらっしゃいと数人の声。さっきのおねえさんが出てきた。よかった。今日の私はついている。一挙にポイントがたまることだろう。

「はい、いいですよ」

レジを何度もやり直し大変そう。夫も心配して暖簾から覗いている。その時レジの横に、あるものが置いてあるのを見つけた。この頃サービスエリアで必ず買う定番となっているものだ。大粒のミルクキャラメル、メロン味、黒糖味、さっき休憩した時にも捜したが今日はひとつもなかったものがここにあった。しかも初めての黒ゴマ味もある。手間をかけたおわびにも丁度いいと思い言った。

「これを4つ下さい」

なおもレジ作業が加わり時間がかかった。暖簾から覗いた夫もそれを見つけたらしく、私に知らせるためにキャラメルを指差しながら一歩店に入る。

「大丈夫。買い占めたよ」

とめくばせをする。

隣の店にお母様も私たちも好きなしろあんがあったので鯛焼きも買う。

「しろあん、なかなかないんですよねえ」

と喜びを表現してここでもポイントをもらった。

ポイントためて世界旅行へでも行けたらいいな！

世界一周旅行！！

＜タイムサービスで安くなるという時間まであと５分という時もさっとレジをすませます。レジで言われるのですが「いいわ」と言います。割引チケットも使うと１０円引きですよって。「いいの」と言ったのにわざわざチケットを取ってきてくれたレジのお姉さん。そうゆうのは面倒なだけで好きじゃないのです。貧乏なくせして変？＞『2002　ＳＨＡＲＭＡＮ』「シャイ＆モード 」（携帯＆はずかしい話）