ファンダンゴ(張り紙)

「だんごの質問ばかり来るの？」

「そうなんです、もう作らないのに」

「おこっちゃったの？」

「そういうわけではないですけど」

「ふうん」

いろんな不満が爆発したみたいな張り紙だ。なじみのお兄さんなので話しかけてみた。変な張り紙があると教えてくれた薬剤師達は、私がだんごやと話し始めたのでおどろいて離れていった。大丈夫だよ。こわくないのに。。。

そのだんごやには寿司や弁当もある。よってフルタイムの仕事に行く時毎朝寄る。自転車を店の横に止め、鍵をかけ、ウォークマンのイヤホンを耳からはずし、手袋をとり、財布を出し、弁当を受け取り、弁当をしまい、財布をしまい、手袋をし、ウォークマンのイヤホンを耳にはめ、自転車の鍵をはずし、大急ぎで自転車を走らせる。毎日毎日・・・。その際そこのおばさんと挨拶をかわす。そして『いってらっしゃい』と送られる。仕事へ行く時以外に利用するときは、うぐいす饅頭やだんご3本入りパックをおまけしてくれたりする。

『寒くなりましたねえ』『そうですねえ』

『毎日暑いですねえ』『そうですねえ』

そのおばさんとはそういう仲だった。それが7年ぐらいも続いた。そしてお兄さんが来た。しばらくふたりで働いていたがある時からおばさんがいなくなった。

随分経ってから聞いてみた。

「あのおばさんはどうしたの」

「来てますよ。時々」

随分経ってから又聞いてみた。

「あのおばさんはどうしたの」

「体をこわしたんです」

今、ハーフタイムのパートの仕事を終え夕食の支度に困ったときに寿司などを買う。奥の方でデスクワークをしているお兄さんにずいぶん離れたこっちのショーウィンドウまできてもらって、会計をしめた様子の金庫も開けさせて弁当なども買う。ついでにまんじゅうも買う。そしてどちらのせりふとも言える挨拶をかわす。

『今日は風がすごいですねえ』　『そうですねえ』

『暑い日が続きますねえ』　『そうですねえ』

不満が爆発したみたいなだんご関連の張り紙の横には、更に違う張り紙もあった。覚えきれないので、夜ゴミを捨てに行った時にデジカメと写メールで撮ってきた。その内容とは・・・ちなみに題名の「ファンダンゴ」とはスペイン各地にある民謡の一形態のことです。だんごのファンへのメッセージということで・・・。

＜だんご　しか　用事がない人　子供連れなどの若い女性や主婦の方へ！！（しか、に赤丸）

人出不足が解消されない限りだんごを作ることは　ありません。（ありません、に赤丸）

店の中では別の仕事をしていますので、団子に関する質問は　ご遠慮ください。（ご遠慮くださいに赤丸）＞

＜当店でお買い上げの品物は、食べ物ですので、店を離れてからの返品や交換はご遠慮ください＞

＜両替は　お断り　します。（断りが赤い線で囲んである）＞

私は張り紙の言葉を家族に話して、異常なほどに大笑いしてしまったんだけど、

お兄さんはそうとう疲れてる？？？