エレクトロニック・トール・コレクション・システム

穏やかな夫が大きい声で言う。

「えええーーー。もう、やめようか」

連休の車に乗る予定をキャンセルしようと言いだした。

「連休のドライブにＥＴＣが使えませんが、私が細かい金を用意して寝ないようにして通行料をさっと渡して負担のないように致しますので・・・」

穏やかな夫がショックを隠せない。

「えええーーー。なんだよう」

銀行で振り込みをする。営業時間外だからか、通帳か振込カードでかと聞かれ、現金での振り込みができない。通帳を持って来ていないし。郵便局へ行っても、振込なら振込用紙か郵便局の支店名を選べと言われる。ぱるるの契約はないので通帳からの引き落としはできない。

通帳から現金をおろして振り込もうと思っていたわけだから、通帳を使って振り込むほど残高がない場合もある。そういう時、下ろした金を又振り込む。しかも他行へ振り込むことになる。引き落としに105円の手数料が掛かっているが、振り込みに更に630円を掛けて・・・銀行が閉鎖されたＡＴＭのみが並んでいる場所で作業する。

給料で家計のやりくりをするという世間一般の主婦、必要な時に１０万ずつ引き下ろす私は給料日は関係ない。むしろその近辺は混みそうなので避けて早め早めにに引き出したりする。クレジットは毎月１０万までと決めていた頃もある。そういうゆったりして使いたい放題だった我が家の家計が、貯金もなく困窮に貧してきた。まさに「ありときりぎりす」状態と言えよう。特に近頃は「自転車操業」の感がある。そしてカードが止められた。

２０００年に芥川賞を受賞した町田康的にぼやきを書いてみる。町田康的とはポイントを絞って詳しく書いてみるということ。少ししつこいほどに問題点をあらいざらい書いてみるということ。またはそんなテクの面白さを生かすということ。その日はもうすでにゴールデンウィークに突入していた。出かける日は４日。今日振り込んでも銀行の手続きは連休明けの７日であって、カード会社へは翌日８日にならないと確認はできないと言う。絶対絶命な状態がきた。

ETC（Electronic Toll Collection System、エレクトロニック・トール・コレクション・システム）は、ノンストップ自動料金収受システム。日本では一般にイーティーシーと呼ばれ定着している。そのＥＴＣを利用しないでたいへん手間がかかる普通車ゲートを通らなければいけなくなるのか。すっかりＥＴＣに慣れた私たちにはそれは耐えられない。特に込み合うこの時期に。しかもＥＴＣの連休サービスがあるというのに。。。定額給付金という名目で金がばらまかれると驚いていたら、週末の高速道路が千円でよいとかが急に決まった。政府はよっぽど金が余っているらしい。意味もなく出掛けて橋を渡ってみたりして遠出をしている人々の映像が流れる。あさましいと思うがそれで経済効果があるというならそれでいいのかとも思う。うちは必要な外出であって千円だから行くというものではない。

だからと言ってその千円システムを利用できないばかりか、ＥＴＣまで使えないとは・・・近所の銀行が廃止されてＡＴＭだけが設置してある場所へ行った。残高を確認したらいいタイミングで入金があり前月分がうまく引き落とされていた（ここ自転車操業といえる）。

そこで三菱ＵＦＪへ電話した。事情を話し「主人にも叱られちゃって」と嘘までつき「なんとかなりませんでしょうか」と弱い嫁を装った。

「５月１日入金されたということを信じて、ＥＴＣだけ使えるように致しましょう」

かわいそうに思ったのかそう言ってくれた。

「今回は特別ですよ」

などと言われながらそんな細かい作業ができるんだと思いつつ丁重にお礼を申しあげ有り難くお受けした。夫の補聴器３０万円の一回払いが効いてしまったと後で気がついた。外出し２０キロでゲートへ入ってバーが上がった時にほっとした。近所のスーパーでおそるおそるカードを使ってみたら、使えた。。。おーほほほ『魔女のくらしよう』「ＥＴＣの回復」。。。しかし、車検後の点検代２年分先払い、パーティの記念品などまた引っ掛かりそうなものが控えている。

『新世代の倫理を告げる、無頼派モラリズム』というキャッチフレーズがつく、町田康的にポイントを絞ってと思ったが、やはり絞り切れずたくさんの事柄が入ってしまった。もっともっと、絞って絞って、今度こそ町田康的エッセイを。。。