Ｋ沼の怪

夕食後、電話が鳴りました。

「車の点検時期になりました」

ディーラーが言います。

そして翌日の１４時に行くことになりました。

車を置くと食事に出ます。隣のうどんやとか、夏のお好み焼き屋とか、１０分程歩いてステーキ屋とかに行き、時間を潰してくるのです。今日は隣のうどん屋を提案しました。さっき起きたばかりの私の意見は、お昼にうどんを食べたからと言う夫に却下され、うどん屋とステーキ屋の中間にあるファミレスに行くことになりました。

女の子が席に案内してくれました。前回来た時のテーブルの隣だった。

さっきと違う女の子がメニューを持って注文を取りにきてくれました。さあて何にしようかなあと考え始めたら夫が言います。

「あのさ、さっき案内してくれた子がＫ沼で、今の子もＫ沼だった」

「ええ、そう？」

前々回に来た時は、マミさんと一緒であっち側の席だったなあ。緑の公園が見えて窓枠が十字架のように撮れた写真をブログにもアップしたんだっけ。そのマミも名札を見て名前を覚えて、美容院のおねえさんや看護婦さんと仲良くなっていたなあ。名札が読めない近視の私は関心がないが、名札が読めるほどの老眼の夫はいつも名札に目が行く。

「でも今の肥ってる子とさっきのふつうの子が姉妹とは考えにくい」

と言ったりして又違う女の子が運んでくれた料理を食す。写真あり

「今のは田中、だった」

と夫。

食べ終わってレジに行く。せっかく夫の為に持って行ったのに眼鏡を忘れて読まなかったシーユーの本『インプレサリオ』を小脇に挟み、お勘定の板を差出し財布を開けていると、

「またしてもＫ沼だよ」

夫が驚き知らせてくれました。さすがに私も驚いて目を凝らして見てみるとはっきりＫ沼と書いてあります。この店の名札はみんなＫ沼でまとめているんじゃないかと思ったりしながら、おつりを受け取ってから聞いてみました。

「この店Ｋ沼さんが多いわね」

「よくきかれるんですけど、私たち姉妹なんです」

長女と思われるＫ沼さんが慣れている様子で説明してくれる。

「でも肥った子とか・・」

そこへ肥った子が近寄ってきました。

「妹なんです。３人姉妹なんです」

「あ、そうなんだ。謎が解けました。ありがとう」

ああ、そうなんだ、などと言いながらちょっと逃げるようにドアを出ました。今時そんなこともあったりするんだと感心し、きっと姉妹３人でバイトしてたら心強かったりするんだろうね。太ったって言っちゃったけど大丈夫だよね、などと話しながらディーラーへ戻る道を歩く。

ディーラーではオイルとワイパーを替え、６２００円也。担当のＳ本さんは、私たちが車を買いにきた夜のことを話し始めた。３人でレンタカーで来て中古でもいいからと言ってましたよね。はっきり覚えていますよ。それ言われるとあの頃の可哀そうな私たちを思い出すので実はやめてほしいのだが、少しは嬉しいような懐かしいようなそんな気持ちもあり黙って笑って聞いている。

あの３人姉妹に、がんばってって言ってあげればよかったなと。

ま、次回には。

１１月は二度目の車検だし。