☆「スライス　オブ　ライフ」

Ｚｅｐｐ　Ｔｏｋｙｏ

降りたらホームにノエルがいた。

最寄駅まで車で送ってもらいＩ駅から高速バスか、Ｉ駅からＴ駅まで電車で行きそこからバスか。高速バス乗り場をパソコンで見たり、実際に車で探検もした。駐車状況や高速道路に降りる重い扉を開け、長い階段を下り高速道路の停車場チェックもした。その日が近づくにつれて迷いに迷っていた。一人で電車は無理だと思っていたがそれが一番シンプルだった。

降りたらホームにノエルがいてくれた。

又、ライブに行けた。

前回の会場は、収容人数が一万人を超えるという『さいたまスーパーアリーナ』だったが、今日のここ『Ｚｅｐｐ東京』は2,709人とか。1階はスタンディングだが2階は椅子ありだ。

私の席は椅子に座っていられる2階席だ。ステージの真正面なのはうれしいが、波動、音波、カメハメハをモロに受け、更に心臓の鼓動を狂わせる変拍子のドラムが響く。心臓に変調をきたしている私はずっと苦しくて椅子から立てないでいた。

外に出ようかと何回かの誘いがあり途中で抜け出した。階段で休みトイレも行ったら生き返った。会場に戻り2階席の1番後ろの広い場所で音楽に合わせて踊りまくった。楽しかった！

終わって外に出ると、クリスマスでもないのに木に青いイルミネーションがある風景が。田舎に住んでいる今思うに、エントランスのスペースも広く取ってあり公園も多い景色に、流石に都会はエクステリアのデザインも違うなと思った。

昼は、ノエルがランチもしたことがあるという洒落た店でオイスターを頂く。スーツを着た男のコンシェルジュのような人が４種類の牡蠣の産地を説明してくれる。生ハムとオリーブとバゲットも注文してくれて、飲み物はシャンパンだ。無事電車もこなしたし気分上々だ。

夕食はホテル内の店で中華料理にした。ウェイターのお勧めで9,300円のフカヒレスープをシェアした。ホタテやエビの包み焼もね。娘と過ごすゆったりとした時間を楽しんだ。

部屋に戻り夜食でラスクとチーズと赤ワインを頂いた。私の趣向を知り尽くしている。

フジテレビの隣にあるこのホテルの夜景は綺麗で海も見える。沖縄やハワイに行かなくてもここで同じ景色が見られるなと思った。

朝食は３１階のラウンジで、ベイブリッジをくぐり抜ける船を見ながら頂いた。

お台場のビルの谷間を無料バスやルートバスでつながっているホテルや駅。ノエルはスマホで時刻表を見ているようでなんとスムーズに移動できる。品川駅は近未来を想像させる長い通路が続き、透明なエレベーターフードがそこここにある。

引っ越し先には今まで利用していた都市銀行がなく、義妹のアドバイスで新たにゆうちょの通帳を作っていた。通帳記入をするというのも今回の旅の目的の一つであった。二つの銀行で六冊の通帳に残高記帳をした。

ノエルが駅中の店でコーヒーと甘いパンを持ってきてくれて私の携帯を操作している。初めて一人で遠路出掛けてきた私の為に『えきネット』に登録して携帯電話から電車のチケットが取れるようにしてくれた。

それで特急券、座席指定券を予約してくれて、乗車券はｓｕｉｃａを改札にかざすだけで楽々帰ることができた。娘から夫に用意されていたバレンタインのチョコレート、星の王子さまバージョンを預かり帰途についた。

帰りは特急のＩ駅から乗り換えてひと駅のＨ駅まで来る。そこから夫の手を煩わせずにタクシーで家まで。こりゃあ、上野の美術館などにも遊びに行けるぞ！体力があればディズニーランドもか。東京駅から新幹線に乗れば伊豆にも、か。

夫の定年記念としての夫婦ハワイ行き、親子３世代のドイツフランス旅行、毎回ライヴに連れ出してくれたりしてくれている。今回のイベントも、昔言っていた『出世払いの親孝行』の一環なのだろうか。

世間では少子化で子供を産めと言われたり、親の介護の心配やら、資産又は負債の相続やらと、いまどきの子供は大変だ。親も迷惑を掛けないように暮らし、迷惑を掛けないで死ぬようにしたいものだ。皆そのような気持ちで時代を引き継いできたのだろうが。

夏にはうるさいほどのカエルの声、山があり、畑があり、森があり、庭には４匹の野良猫が遊びに来てくれるものの、車移動のみの数か月を過ごしていた私が、一人で特急に乗り都心へ出向いた冒険物語。

エッセイストクラブの編集長に勧められて書いた『魔女のくらしよう』でした。

レインボーブリッジを渡っている魔女