スティック（台湾）

今日の駅待合室は満杯だ。

平日であり通勤時間でもあるからか立っている人までいる。私は中に入らずに今日の寒さに驚きながらホームで電車を待った。10分が長く感じられる。

滑り込んできた電車に乗り込んだ。

予約した私の席を見るとそこにおじさんが座っている。

トランクや杖を持っているので

『そのままで』

と言いながら隣の席に座った。

Ｔ駅を過ぎた辺りから、台湾九份で捻挫したのだ、と話が始まった。

九份とは映画「千と千尋の神隠し」のモデルになった町として紹介された場所です。旅行中にそこの階段を踏み外して捻挫をしてしまい困っていると、現地のおばあさんが杖を差し出す。言葉が通じないので持っていけという身振りにありがとうと拝むジェスチャーをして頂いて来たのだと言いながらトランクの手に掛けた杖をさわった。

そして3ヶ月後の今日、杖を返しに行くため成田へ向かうのだと言う。

中々無いそんな話に感激して、ビデオで撮りたいついて行きたいなどと盛り上がった。

日本から杖を返しにお礼のバッグやハンカチなんかを携えて上野で待ち合わせをしているという奥さんと来てくれたこのおじさんに驚く様子を見てみたいと思った。せめてブログに書くと了解を取った。

旅行の3日目に行くって言っていたから今日あたりおばあちゃんの驚いた顔が感激し笑顔に変わるところを見ている頃だ。