続・ウィークエンドホステス（アルバイト）

『今日は行くの？』
『ううん。』

『行く恰好じゃないものね。もう疲れたんじゃんない？』

『もともと好きで始めたことじゃないものね。』

『そうなんですう。』（まだやめたって言えない）

『連休中は店あったの？』

『ううん』

『もう関心なくなっちゃったの？』

『土曜日はお墓参りだし』

『あああ、そうか』（まだやめたって言えてない）

仕事場のＴ先生に数日後やめたと言った。

『なかなかできないいい経験だったんじゃない』

『せんちゃん ( 夫）も、よく許してくれてたよ』

店にたどり着くのが困難な日があり、更に京都エッセイストクラブ『ウィークエンドホステス』に書いた一件があり店のお手伝いを辞めた。店の女の子が私の香水を好きと言ってくれて、翌日にはメモしようと紙とペンを用意してきた。ブランド名ともう廃番の香水名を書いた。そのＪちゃんが会いたがっていて土曜日に行くと言ったらちょっと来てもいいですかって言っていたらしい。私は結局十分位で帰って来てしまったので会えなかったけど、一ヶ月ぶりにその店に行き最後のお給料をいただいた。タクシー代のお釣りも渡し精算が済みさっぱりしました。帰宅し着がえて今日買った帽子をかぶってみた。

『すてきだね』　『魅力的だ』　『魔女さん美魔女だ』　『ここ（地元）で一番の美人』　『バレリーナ草刈民代さん』女五人いるカウンター内で、『あなたが一番！』隣のＡちゃんに『あなたは二番！』　『歌がうまいねえ』　『スタイルがいいね』　『踊りがすてき』　などなどとおだてられ四ヶ月経ちました。趣味で集めている長いドレスも大ぶりのアクセサリーもどんどん使えると思って張り切っていた面もあったのだが辞める決心をした。私には合わない世界ということで。そして、この顛末をＫＥＣ　『ウィークエンドホステス』で書き、同人誌に投稿した。

今年一月から始めた店のお手伝いが軌道に乗ってきた。

Ｒ子が私の噂を聞いていて、いつか行きたい連れてってと言われていた。でもはっきり言って仕事場の経営者にアルバイト風景を見せるつもりはなかった。ずるずると生返事をしていたが、近くまで来ているので迎えに来て欲しいとバイト中にメールが来た。これは断るわけにもいかず迎えに行くことになった。その日すでに飲んでいたＲ子は店で歌い酔いつぶれ夜中三時に私と一緒にタクシーで帰宅することになった。きれいで楽しい店だと気に入ってくれたのでよかったなと思っていた。そこまではー。

三月のある日、二十時過ぎに店に行ったらＲ子とＴ先生がいた。

Ｒ子は山崎のストレートで歌い続け、Ｔ先生は水だけで零時まで。口の悪い人が私をおばさんと呼ぶと喜んでいる。やりづらいよー。その後、口の悪い人のうるさい友達が帰り、口が悪い人とシルクハットのＮさんの八十点越えを目指しての歌合戦をはてしなく聞き三時に終了。長いよね。疲れた。

その頃バイトをＲ子に乗っ取られる夢も見た。たとえば、友達と友達が私抜きで会う、それはうれしいことと言っていた子がいたな。友達と友達をつなげるのが楽しいことだと心から思っていたのだろうな。あの子Ｍはそういう子だったから。私はうれしくなく嫉妬までするかもしれない。

四月で店を辞めたのだが、五月に実際、私が紹介した店にＲが通い詰め、そこの客とも仲良しになっているという情報が入った。

客からメールが来て一緒に飲んだりもするとか、どこかで飲んでそのあと友達を引き連れて店に行ったり、私のフラメンコ仲間のＹ子ママとも仲良しになって、お店が休みの日曜日にランチをしたりと、私が行かなくなった間に急激に接近している情報を聞き驚いた。さらにＹ子ママに頼まれてたまに店を手伝うこともあるそうで、その日は飲み代はなしだとか。私が退いた後の位置にすっかり入り込んでいる。三月にバイトをＲ子に乗っ取られる夢を見たが正夢になっていた。嫉妬もどきの気持ちがあるのか、こんなことわざが頭に浮かんだ。

じゃーん！！『軒を貸して母屋を取られる』

五月　

＜メールで退職願＞

『Ｙ子さん、ご心配おかけしてすみません。この四か月、楽しかった反面、やはり無理があるとも思ってもいたので、月曜日の件はよいきっかけになったと思いました。でも、優しい泰子さんにはご迷惑をおかけしてしまうことになり心苦しいです。金曜日は私がいなくても大丈夫かと思いますが、Ｙ子とまりあの土曜日はメンバーチェンジしてください。よろしくお願いします。まりあはスペイン留学とか月に帰ったとか思って下さい。大変お世話になったのに申し訳ありません。ありがとうございました。魔女まりあ』

< まりあとＹ子の土曜日は想い出の一頁＞

『まりあさんにはとてもとても感謝しています。最初はわたしの無理なお願いに戸惑いながらも徐々に『ＪＪ』が楽しいと言ってくれた事がわたし嬉しくてね、一緒にいると心が和みました。気持ちの優しく穏やかなまりあさんに甘えちゃったのですね、わたしが守ってあげられなくてごめんね。昨日は『歌ってよ夕陽の歌を』を思い出して泣いちゃった。まりあさんの話し方や仕草や歌っているときの姿が大好き！まりあとＹ子の土曜日は二人の想い出と思っていい？スペイン留学から戻ってきたら何処かでワインを飲みたいな。Ｙ子』

< 迷いながら・・・ >

『ありがとうというと何か、上手に説明できないのだけど、終わってしまうような複雑な気持ちで書けなかったけど素直にありがとう！まりあさんありがとう！Ｙ子』

六月　　

コンパネを落札した。Ｙ子さんが欲しがっていたフラメンコの練習板をオークションで落札してあげた。送り先は店で、代金はかんたん決済で私がしている。このおかげでＹ子ママと『 JJ 』と、まだつながっているとも言える。
『コンパネのお代を立て替えてもらって恐縮です。水曜日にＩ堀さんに預けるので来週の月曜日になってしまいますがいいですか？昨日はうっかり靴を持って行くのを忘れたので今夜コツコツしてみます脚がツルかも』　

七月

八月

九月

梅雨が過ぎ夏も終わった九月、フラメンコ発表会が終わった時Ｙ子ママからメールが来た。

『マリアさん、発表会は楽しく踊れましたか？お支払いもそのままで本当にごめんなさいあれきりメールもしないでダメなあたしね。ずっと会いたいと思っています。また連絡しますＹ子』

『発表会なんとか終わりましたよ。疲れはて次はないかも、などとも思います。私もお会いしたく『ＪＪ』に集金がてら行こうかなんて思ったり。お店も順調らしいですがＹ子さんもお体大切にして下さいね。またね。（添付画像赤い爪あり）魔女まりあ』

『真っ赤な爪ステキ！これで踊ったの？集金がてら来てもらえると嬉しい。一緒にワイン飲みたいＹ子』

十月

薬局を今年の一月に辞めた人がいる。ミニスカートにハイヒール、長いつけまつげでお酒好き。御主人がいない日は子供をおいて都内までひとりで飲みに行くというＫさん、Ｒ子に連れて行かれ店が気に入り今『ＪＪ』で働いていると言う。そんな情報を又Ｔ先生から知らされる。更にＹ子ママが私の仕事場である薬局の裏の店にも飲みに来ていると聞いて驚く。お金を貸している私はＹ子ママからなかなかコンパネ代金の返済の話が来なかったことが細く長いストレスになっていることに気づいていたこの頃だというのに、更なる追い打ちだ。

十一月　

私と同時期に店のお手伝いを始めたフラメンコ仲間の T 子さんが店を辞めることにしたと報告が来た。歌がうまくてお酒が好きなＴさんとはいえ約一年良く頑張ったと思う。用事が出来て続けられないという理由にしたがテンションを上げて行くのは大変、ラクに楽しく飲みたいというのが本音だと明かしてくれた。店を辞めるまでの顛末をＫＥＣ　『ウィークエンドホステス』という題名で書き、四月の締め切りに間に合うように投稿してあるが、クーデター騒動があり年一回の発行もままならなくなった同人誌は、経営状態の悪化もあり、いまだ未発行ではある。

十二月

私はこの数か月体調が悪く家から五分の場所にあるレッスン場まで行けなくなり夫に車での送迎を頼んでいた。忘年会の日も夫に送ってもらった。そのあとの二次会でコンパネ代金回収も兼ねて店に行くことにしていた。ずいぶん前にパソコンで作った領収書は少しへたっていたがバッグに入れ持参した。忘年会会場で飲んで踊って、当日さらに四人が加わり久しぶりの店までタクシーを乗りつけた。

『Ｙ子様　昨日は久しぶりの『 JJ 』へ行くことができてよかったです。Ｙ子さんがすっかりしっかりママになっていて安心しました。しかも楽しんでいてうらやましいとも思いました。『自分の店』ってすごいですう！細いから体には充分気を付けて下さいね。私は体調不良の為、前回のレッスンにてそして昨日の忘年会をもって、フラメンコをしばらく休むことに致しました。復活を祈ってね。あは。またね。まりあ』

『久しぶりのまりあさんは変わらずきれいでおしゃれで素敵でした。わたしはまりあさんの舞いながら歌っている姿が大好き！心から会えて嬉しかったです。ずっと気にしていながらもコンパネ代をお渡しするのが遅くなり本当にごめんなさい。体調がすぐれないと聞いてとても気がかりです。レッスンをお休みしている間コツコツしたい時は『 JJ 』でしてね。まりあさん大好きです。Ｙ子』

あは！魔女まりあ64