フェアリー(プレゼント）
それを説明するのは大変だ。
結論を言いたくてあせってしまうのだ。友達にその絵について説明している時もパパに「それではわからないだろう」と言われる。もう一度ゆっくり話す。最後は「へええ、あっ、鳥肌がたった」と言われめでたく説明は終わる。
それは数年前の母の日のことだった。
ふたりの娘から額に入った絵をプレゼントされた。それは同じ絵を何枚も何枚も切り抜いて貼り付けて、立体的に浮き出たような絵が出来上がるというキットを使ったものだった。子供たちはママに内緒でそれぞれの部屋で作っていたそうだ。出来上がって見せ合ったときＭがあまりに細かいところまで切り抜き、しかも何枚も重ねていることに驚いたと長女は言う。最初のうちはふたつの絵をかわりばんこに前に出して、ひとつの額に入れていたが、紫の長女が作った方が表になったまま替えることをしなくなっていた。
ある人が、Ｍに置き時計をプレゼントした。そこにはある言葉が書いてある。Ｍは同じ言葉が書いてあるアルバムをみつけその人に贈ったそう。その人はそこにふたりの思い出の写真を入れたと言って私達家族に見せてくれた。そこには楽しい様子、泣き顔・・、楽しい旅行、きれいな海、ドライブ、泣き顔・・。
「何で泣かすの？」
と聞いたら
「すぐ泣くんですよ」
と言う。涙がたまっている目を自分で撮ってるみたいだからしょうがないか。楽しければ楽しいほど悲しい。幸せなら幸せなほど苦しい。心が不安定だったのかもしれない。
「あなたからは
たくさん たくさん
もらったの。
目には
みえない
もの。
でも、とっても とっても
たいせつな もの」
お友達が帰ると、ため息をつきくすんくすんと泣きベランダのサボテンを見る。私のＨＰも「ただいま瞑想、静養中」として休んでいるが、あるときＭのホームページを作ろうと思い立った。それは私が見つけた生きる知恵かもしれない。文を書く。あの日を書き残す作業をする。久しぶりにパソコンの前に座り、Ｍらしい絵さがしなどを線香の香りの中でぼうっとしながらもする。妖精バージョンにしようかな、などと考えふたつの絵を捜した。
「ママ、こんなの作っちゃった」
家族にもおこられそうと思って見せたそのページの表紙の絵を見て長女が言う。
「あれ、これって・・」
額を捜せと言う。数年前母の日に作ってプレゼントしてくれた額だ。
「たしかこの絵は・・」
ホームページを作った事は暗に認められたようで少しほっとしながら額の裏の板を急いではずす。紫色の絵の裏からピンク色の絵が出てきた。
Ｍがママのために選んでくれた絵が現れた。
それは、ママがＭのために捜した絵だった。
丁寧に作られたそれは、あらためて私の宝物になった。
その絵を使い仲良くしてくれた,たくさんのお友達にお手紙を出した。
＜今年の夏は暑かったですね。お元気ですか？Ｍといっぱい仲良くしてくれてありがとう。これからもみんながんばろう。応援してるよ。ファイト！！＞
「夏はお手紙ありがとう。つらいことばっかりで苦しいよ。又Ｍのメッセージで助けて」
という年賀状が来ましたが・・。
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『マリアチャンネル』を作っていたことは練習だったのかと思う。
２０００年から私はＭチャンネルのための練習をしていたのかもしれない。なぜならすぐ『Ｍーｃｈａｎｎｅｌ』を作ることができたから。そしてそこで文を書くことで気持ちを紛らわせ、ある種癒されている自分がいる。現実を書き記しながら現実から逃げている。私にはその方法しかないと知っているお姉ちゃんはかなり我慢をしながらも鷹揚に認めてくれて軌道をはずれないように見張ってくれている。そんな中今日もパソコンの前で数時間が経つ。でも、現実から逃げないで考えて考えて素直になればよかったのかとも思う。理解できない。まだ不完全燃焼なのかもしれない。我慢をしすぎた。頑張りすぎた。疲れた。
1２月ー「このページを見て、ご家族初め本当にに多くの方に愛されていたんだなぁと思い自分のことのように嬉しくなりました。」というメールが来た。
パパが言う。
「本望だね」
「ママは文を書いて少しは発散してるのかもしれない。でもそれを途中までしか読めないとか言うおねえちゃんやパパを悲しませているのかもしれないとも思ってきたよ。ママは何度も泣いて文を仕上げるけど、それを一気に読まなきゃならない人たちはきっとつらいんだよね。どうしよう。リエコも「ゼクシィ」を読んで泣いたって言ってた。昨日も今日も冷たい雨だよ。Ｅもパパも仕事。ママも国分寺まで仕事に出掛けるんだよ。Ｍは？」
「ママより 今日考え付いた事を報告します。ママの墓碑銘は○○まりあとします。天国で聞いてもすぐぴんと来るでしょう。きっとすぐ捜せるでしょう。なんだか楽しくなりました。ママって変でしょう。知ってるって？戒名はどうするどころの話じゃないよ。すごいよ。早く会いたいねえ。1205」
「皆にＭを知ってもらいたい。憶えておいてもらいたい。小学校の時のお友達にも今のＭを知って欲しい。それが叶えられた。文は増えていく。これでいいんだと思う。その記念としてＭの写真をアップした。右クリック禁止でアップだ。その場所のヒントはチュンチュンだ。1209。」
ある人が、仏壇にマグカップを置いた。そこには言葉が書いてある。
Ｍは同じ言葉が書いてあるものを捜してプレゼントすることは・・・もうできないが・・・。
ねえ ひとりじゃないよ
しっかり瞳をあけてごらん
ゆっくり周りをみてごらん
ほらあなたのそばには
こんなに
愛が
あふれてる
