ドルチェ（クリスマスパーティ）
年の瀬の電車に乗った。
久しぶりの電車に少し緊張しながらも車内を見渡す。若い子がたくさん乗っているがあの子もこの子もみんな違う。先日外出した時のこと「Ｍはどこにもいない」と妹との電話で話した。この頃妹には気持ちを話し「君だけがどこにもいない世界っていうミーシャの歌のようで悲しい」と言い、「そんなものをあげちゃってごめんね。辛かったら聞かないように」と言われたりする。
修二と彰が歌う「青春アミーゴ」のカメナシがＮａちゃんに似ているという話をした夜のこと、うちのおねえちゃんが似ているような気もする。細いあごにかかる髪、そして試験勉強だとかで前髪をゴムで結んでいたらますますカメナシに。
毎朝そうなっている事に気が付いた。そういう状態にして会社に出掛けるようだ。そういう状態とは前髪をゴムで結んでいることではない。仏壇の前の座布団、お菓子の籠の上、ソファーの仏壇寄りの肘、それらの場所に操作できる向きでリモコンが置いてある状態のことで、その不思議に気付いたのはずいぶん前のことだ。テレビの前に陣取った仏壇は、芸能界の事から、事件、ニュースなど何でも知ることができているはず。だからコウダクミの歌でもふりでも、ユズでも、ケツメイシでも、よくあひる口の真似をしていたスズキアミの再デビューも知っているし、１１月に発売したのに年間売り上げ一位になったこの曲「青春アミーゴ」のことなど全部承知している。きっと歌ってもいることだろう。
電車の中にも、どこの町にもいなかったＭが、クリスマスの立川に３人いた。ニット帽をかぶって高島屋のガラスのむこうにこちらを向いて座っていた。近づいても近づいても似ている。驚いて証拠写真をとカメラを用意した私にパパも「俺を撮る振りして撮れ」と言うほどだ。そのあとかなり近寄って見た。彼とじゃれあっているその子は幸せそうでちょっと太っていた。
そのコーナーから出てきた子の髪の色が似ている。下を向いてバッグの中をかき回し何かを捜しながら歩いている。「ああこの子、髪の色や背が同じぐらい」とのぞきこんだらかなりお姉さんだった。近所のシダックスの前のオレンジ色のライトの中で男の子と二人話している黒い服の子がいる。体のバランスが似ている。楽しそうにしている。
私の話を聞いて「その中に本物がいるよ」などとおねえちゃんが言う。二人は近づいて確かめたけどシダックスの前の子は車の中から見たので確かめられなかった。あれだったか・・・。写真を取り込んでからパソコンで見せたらおねえちゃんも「オオッ」と驚いた。
「この前白いビーノを見ましたよ」
重ーいという位大ーきな花束を抱えた子が言う。
「Ｍチャンネルは、いつも写真を見てから読み始める」
と言う子は、渡したブロマイドを見て「ああっＭだあ」と泣く。お友達のしるしとしての一周忌の記念品であるブックマーカーが今日手に渡った子が泣き笑いで言う。ママが勧めた『星の王子様』の本を買い、それにそのブルーのスワロススキーが飾られたそれを使うと言う。
Ｒが来た。Ｍの鉛筆画を画廊喫茶に飾るため、原画を取りに来た。
Ｒの個展を見に下北沢へ行った。下北沢は演劇、アトリエ、ショップがあり、いろんな可能性がありそうな若者の町、その町でのお友達との二人展だ。夢を聞いた。叶うといいね。
「施設の実習をした時学校に提出したMのレポートを見せてください。」
Ｍｏが迷っている。仕事をやめた今、相談したい。そのＭｏが言う。「23歳の誕生日は姫だった。エレベーターが開いたらバラの花束を持った王子が、部屋へ入ったら大きなスヌーピーのぬいぐるみを持った王子が。王子さまがふたりもいてあの誕生日はすごかった。それはすべてＭが仕込んだことなんですよ」と思い出話をしてくれる。そして「パレス（墓）へ行くよりサロン（家）に来たい。部屋のあちこちにいそうだから」とも言う。
「Ｍたちカップルが目標だった。」
Ｎｏが言う。どうした？なにかあった？電話しても一声でなにかあるとすぐかんじてくれて、会おうと言ってくれて悩みを聞いて泣いてくれる。親身に相談にのってくれる。上から諭すではなく一緒に悩み解決法をさぐる。勇気づけてくれる。そして元気になり笑う。小さいけれど大きい存在だった。「悪口を言わない子だよね」とＭｏとうなづき合っている。。
Ｃが言う。「つらいことがあると飲んで騒いで忘れ又頑張る、そうして暮らしてきたから今どうしたらいいかわからない」と言う。中型免許をとると決心して教習所に行き、オートバイを起こすことがやっとできた。でもみんなに迷惑をかけるかもしれないからよおく考えなさいと教官に言われたそう。それでもとると言っている。高速に乗り墓へ行く為に。車の免許を取得中の子も、とったら最初にパレスへ行くと言う。ヘルパー2級免許、小型免許から中型免許取得と意欲がある若者達に感心し、皆の成長のきっかけとなっていることはうれしいことだと思ってみている。
「好きなものを一つ持って帰りなさい」
「ええっいいんですかあ、じゃ私はこれ」
「目をつけていたんだア、これいいですか」
ママが仕入れたもの、おねえちゃんがお土産で買ってきてくれたもの、パパがサンクスで買ってきたもの、お友達が持ってきてくれた季節限定商品など、それでお店やさんを始めた。
「Ｍ、ありがとう、これもらうね」
などと話かけながら持っていく。
ケーキのことをスペイン語の男性名詞で＜パステル＞、女性名詞で＜トルタ＞と言います。チーズケーキは＜トルタ デ ケソ＞チョコレートケーキは＜パステル デ チョコラテ＞又は＜タルタ デ チョコラテ＞パイも＜オハルドゥレ＞又は＜トルタ＞です。ちなみにビスケットは＜ガジェタ＞、プディングは＜フラン＞、シュークリームは＜ベティス＞、ドーナツは＜ロスキジャ＞です。＜ドゥルセ＞とはお菓子、そしてあまーいという意味です。暮れから始めたお菓子屋さんの名前は☆ドルチェM☆とします。これはイタリア語ですが語感がいいのでそれに決めました。
ツリーの植木小さいおもちゃやカードが置かれ、その前のテーブルにはご馳走が並ぶ。シャンパン2本、シュークリーム5箱、ケーキ、チキンナゲット、ポテト、飲み物（麦茶コーラ紅茶）、日本酒2本などの持込みがあり、更に遅れて寿司2桶、フライドチキン2箱、コールスローサラダなどを持ったふたりが到着した。そしてガーリックトースト、サラダ、生春巻きとみかん、そんなメニューで12月19日我がサロンに於いてクリスマスパーティが開かれました。絵を書いたり、知恵の輪をしたり・・常連のメンバーふた組ではあるものの、Ｍを介してこんなにしっくりと仲良くなっている様子に改めて感心しながら友人7人のパーティはお開きとなった。来年は３日にパレスに行く予定だと言いながら、μ μ （ミューミュー＝車）に会ってから帰っていった。
＜♪君だけがいない世界 すべてが満ち足りたとしても
最後のピースを無くしたパズル 叩き壊したくなるよ
君だけがいない世界 誰かの腕に包まれても
君がいなければ 羽のない蝶 歌を忘れたカナリア
君を追いかけても 待ちわびても さよならも言えずに時が止まる
昨日と同じ空を見上げても 君だけがどこにもいない世界
君がいなければ 弓のないチェロ
水の無いプール 色のない虹
ひとりぼっちじゃ羽のない蝶 歌を忘れたカナリア
君を忘れたくても 恨んでも さよならも言えずに時が止まる
昨日と同じ道を歩いても 君だけがどこにもいない世界
君だけがどこにもいない世界.＞
ー君だけがいない世界ーｂｙ ｍｉｓｉａ
「06'も健康で良い１年となりますように・・・」
正月になり伊豆のペンションから年賀状が来た。