アフタージル２９

姫のエピソード１

おじさんが倒れているところに遭遇した。少し痙攣しているようでこわいから通り過ぎようとしたＡ。Ｍは寄って行き声をかけた。しどろもどろで話にならないので「お巡りさんを呼んでこよう」と言って行ってしまった。私を残して、とＡ。

しばし後にお巡りさんを連れて帰って来た。話していたらどうも酔っぱらいだということになった。では、と安心して離れようとしたら、なんとおじさんがよろよろと追いかけてくる。怖いので少し逃げたが何か言っているので立ち止まった。おじさんが近くまで来てさかんにお礼を言う。お世話になってありがとう。本当にうれしい。これを受け取ってくれとお札をくれようとしている。Ａは「いいえけっこうです」と横を見ると「そうですか、それでは」とＭが受け取った。

おじさんはよっぽどうれしかったのだろう。一万円渡したかったのだろう。その気持ちを受け取ったのだろう。笑っちゃうけど自動販売機でお茶を買って渡していたというから、おじさんの気持ちもわかるというもんだ。後でいただいたお金はワリカン（？）にし五千円ずつにしたと言う、吉祥寺駅でのハプニングエピソード。人の心配をしてたり、ちゃっかりしてたり、気が効いていたりするＭの動きが垣間見えた。

姫のエピソード2

実は私も一度駆り出され彼のコンサートに行ったことがある。あれは雪が降っている日だった。雪が積もった道を歩き、ある建物の階段を降りてその会場に入ったものだ。

ある日大きいアンプの前に３人がいるなあと思っていたという。Ｍを含む３人はきっと歌って踊って手を上げていたのだろう、そこでＫが音にやられて気を失った。みんなでライブハウスの外に運び出して救急車に乗せたのだという話を聞いた。お腹や足にまでじんじん響く大きな音だった。気を失うのもありかと思う。１０年ぶりに家に来てくれた子は、Ｍがずううっと応援していたその活動の中で、一人が倒れて救急車で運ばれたという話をしてくれた。

Ｍに歌がうまいと言われてロッカーになったというＭｕは、僕の人生を変えた大きな存在だったと言う。応援することができなくなって５年経ったMu、子供を連れて来てくれたＡ。それらの友達を見たらＭはなんて言うかななどと。Ｍｕはその活動を３年前にやめ今は仕事をしていると言った。いばら姫２９のパーティ一弾目が終わり、予約されていた二弾目が今日終わった。そして三弾目はない。

Ａ本人からの結婚報告はなく、とうとうお嫁に行ってしまった。その日会場であるホテルの前を車で通りその中にきっときれいな花嫁姿のＡがいるはずと考え、そのホテルの写真を撮った。結婚報告の葉書がきた。しあわせそうなＡがいた。その背中にはＭの写真が忍ばせてあるのだという。５年分のサロンでの小さなプレゼントを贈った。ジル様ⅠⅡⅢⅣⅤとともに。これからの５月１０日もずっと心の中で思ってあげてね、と。

あれから来なくなった、あまりに依存しすぎるＣも独り立ちする方向にしたほうがいいと思っているのだが、先日保育園を訪ね母と妹に園を見せながらこちらから面会を申し込んだ。Ｓ－さんと２人で出てきてくれて、元気だった。

心配なカップルもいるが、もう大人だし自分たちで考えて解決していくことだろう。報告はなくてよい。

いばら姫２９のパーティ一回目が終わり、予約されていた二回目が終わった。そして『次』はない。