ハーフムーン ウイズ パープルマレタ
いいお天気ですねえ。ここは赤坂、日枝神社。
人々が集まってきてカップル登場。
ということは結婚式ですね。
つのかくしに白無垢の花嫁、その横には羽織はかまのやせた細い人が・・。
大広間で４時間の披露宴をして、ハワイへ行きましたね。
私はまだいません。
私？私はスーツケース、パープルマレタと申します。
ターイムスリップ！！！
空港へ向かうご主人様。フェイクだけどファーの白い豪華な上着を着て・・、女優さんのようですよ。ほら、横には小太りのマネージャーが私をゴロゴロ、ガラガラ引っ張っていますもの。
さあ、ホテルに着きました。疲れたようで「少し休みましょう」とか言ってダブルベッドに一人ずつ入って、寝てしまいました。マネージャーと思った人は、ご主人様のだんな様だったんですね。ハネムーンのあと２５年経ったのですか。と言うことはハーフムーンですね。ホテルにはピラミッドやスフィンクスがありますねえ。分かりました。ここはエジプトでしょう。いつかはご主人様の親戚であるクレオパトラに会いに、エジプトへ行きたいなんて訳わからないこと言ってましたし・・。
５時間たっぷり寝て、元気回復した２人は、ネオン輝く街へ出掛けて行きましたよ。カジノでがんばるとかって言いながら・・。
カジノ？ネオン？
ああ、ここはアメリカ、ラスベガスだったんですね。
ということは、ここはあのピラミッドで有名なホテル、ルクソーということですか、なるほど。スロットマシーンやルーレットにはまらなければいいけれど心配です。でも元金がそうそうないと思うから、少しは安心しているんですが。それにしても窓から隣のエクスカリバーのかわいいお城が見えます。ディズニーランドのようですねえ。
結婚して２５年、真面目に仕事をしてきただんな様に骨休みをして貰いたいと思ったご主人様。いい奥さんと思うでしょ。ただ旅行へ行きたかっただけだったりして・・。そしてそれには、記念すべき今年、そして挙式した今月しかなかったのです。あっご主人様とマネージャー、じゃなかっただんな様のお帰りです。
どこへ行ってきたんでしょうか。
ストラトスフィア？知っていますよ、通称ストリップと呼ばれる、メイン通りブルバードの先にある高いタワーのことでしょう。何でも３５０メートルあるとか。そのタワーのてっぺんにはローラーコースターがあって、さらにその上には７０メートルの尖塔があってそこには４Gから無重力までを一瞬のうちに体感できるという恐怖のフリーフォールがあるんですよね。 ２人ともこういうのは大の苦手、展望台止まりだったんでしょう。フフッやっぱりね。でも夕暮れのネオンいっぱいのきらめく夜景はちょっとしたものだったでしょう。タワーの中のバフェで夕食を摂り、カジノでスロットマシーンをして、旅行社からもらったレトロな路面電車風の外観のトロﾘｰのただ券でお帰りですか。その時の運転手と乗客の掛け合いがまるで映画の中にいるようでアメリカって感じって、ここはアメリカですから。
さあ、明日はグランドキャニオンへ行くんでしょう。飛行機が揺れて酔っちゃう人がたくさんいるそうですよ。睡眠をとっておいた方が良いですね。朝７時にロビー集合って早いですよ。５時半おきですね。
夜中ご主人様は何度も起きて時計を見ています。今４時ですが３時にも、２時にも見ていましたよ。それに引き替えだんな様は丸い大きなお腹を出してぐっすり寝ています。ダブルベッドをぐるーっと回って隣のベッドへ行きお腹に毛布をかぶせて、窓からエクスカリバーのお城を見たりして、又ベッドへ。早起きが苦手なご主人様、緊張してるんじゃないですか。
ピピピピッ ピピピピッ５時半です。起きてくださーい。
６時半に旅行社からの電話が入りました。「グランドキャニオン寒いです、よろしく」ということらしく、ラクダのシャツやモモシキをはかせようとしていますが、だんな様は暑がりですからいやがっています。シャツだけ着て、出発です。やれやれ。気を付けて行ってらっしゃーい。
１４時無事にホテルに帰ってきました。
「楽しかったねえ」「お天気良くてよかったね」
いいことづくめですね。お部屋で一服して１７時から又出掛けて行くんですね。日本にいるときは夕食の買い物へ行くのもいやというご主人様。だんな様は一日中パソコンで将棋をしているというのに。ご主人様のお友達にすすめられたヴェラッジオの噴水を是非見たいと言っていましたし、特に「タイム セイ グッバイ」という曲がお目当てとか。
日本とスペインに出すはがき持ちましたか。切手はって投函するんですよね。英語は大丈夫ですか。ブロークンだけどものおじしないご主人様、ものおじするけどしゃべれば文法ちゃんとしてるだんな様、この２人いいコンビですよね。夜１１時に戻って来ましたよ。カジノでワインを飲んだとか。いつもよりおしゃべりな２人です。ミラージュ、ヴェラッジオ、ベネチアンなどとホテルの名前がとびかっています。夜シャワーを浴びるご主人様、朝の風呂が好きなだんな様、ハイおやすみなさい。
８時半起床。
今日はもうラスト日です。ホテル巡りとショーを一つ見ましょうということになったようです。だんな様がお風呂に入り、その間にご主人様は化粧をして、いつもよりマツゲあがってないですかあ。フカキョンのようですよ。１０時に出掛けていきました。
帰ってきたのは夜１０時。
なんと長い散歩でしょう。ま、いいお天気だしカジノで一もうけの夢もあるし・・でも旅行前から風邪気味のご主人様パブロンが手放せません。薬又飲んでおいたら？とだんな様、愛を感じますね。今日のホテル巡りはニューヨークニューヨークから始まり、MGMグランド、シーザーズパレスそしてフォーラムショップとか。ダウンタウンまで足を延ばしてライトショーも見学してきたそうで・・だんな様も少し風邪っぽくなり、俺も飲んでおこうかな、ささっと薬を用意するご主人様、又愛を感じますね。
ショーの前のレストランでハプニングがあったそうで料理ほんの２〜３口しか食べなかったそう。それでマクドナルドのチキンとかハンバーガーを部屋で食べているんですね。一もうけは夢の又夢となってしまったようです。明日はロビーに６時半集合とか。又恐怖の５時半おきですね。明日のため荷物をまとめています。だんな様は旅行前には見なかった「ラスベガス」という本に見入っています。歩いたあとに読むとよくわかっておもしろいとか。ご主人様がシャワーから出て来てもまだ読んでいましたよ。
５時起きしてますね。６時までに全部支度も出来上がって、だんな様は英語で何か書いています。
「私達はラスベガスを楽しみました。
今日日本へ帰ります。
ありがとう。」
チップとともにベッドサイドのテーブルに置きました。きっとメイドさん、喜ぶでしょう。
ラスベガスのマッカラン空港から１時間、ロサンゼルス経由で成田へ１２時間、なんと遠いことでしょう。しかしこれで驚いていてはいけません。成田空港へ着いてから自宅まで、なんと４時間かかったのですから。
私の中からおみやげを取り出しました。
今回もやはりブランドバッグに手は出ず、香水を各種。妹の方はお友達とお揃いでとブルガリを２つあげたのに、トレゾァを見つけ、
「一番好きなの、どうして知ってるのー」
としまいこみ、でもアナスイのバック型もいいなと。姉の方は
「香水に興味ないけどこれは欲しかった」
とブルガリを。どうしたらいいのおとうれしい悲鳴のご主人様。ま、よかった、よかった。
帰ってきて３日たちました。
未だにご主人様の腕時計は未練たらしくラスベガス時間で動いているのを私は知っているのです。そしてご主人様のラスベガス旅行の一歩一歩がすべてしるされているという裏情報の存在が噂されています。見てみたい人は、官製はがきに住所・氏名・年令・職業を書き、希望理由も書いてお送り下さい。抽選はなく、応募者全員にお送りします。とのことです。 以上。
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