ハーフ ムーン
「タイはいかが？」 「エーッ」と夫。
「カナダはどう？」 「エーッ」と私。
「ラスベガスは？」 「・・・・」で今回の旅行の行き先が決定となりました。
「第二旅客ターミナル」と書いてある切符を信じて降りた。４階まで登ってFカウンターを聞くと、この集合場所である団体のFカウンターは、「第一旅客ターミナルです。下へ降りて１番か１８番のバスにのって下さい」と言われる。事件は成田エキスプレスを降りるところから始まった。
ゴーゴー、ガラガラとスーツケースの音と共に一階まで戻り、まず１番のバス停へ行く。ここは７番、６，５，４と私が先に駆けて行き、夫はスーツケースを転がして後から来てもらう。３，２と来て１番乗り場がない。
戻って行き夫と３番の前あたりで会う。
「１番乗り場がない。第一旅客ターミナルへ行きたいんですが」
近くで作業している人に聞くと、
「１番はない、８番か１８番へ乗って下さい」
との事。１と８の聞き間違え？
「耳も（もって）おかしくなっているんだよ、俺がしっかりしよう」
「うん、まかせる」
と失敗が二つ続き主導権が夫に移った。余裕を持って出て来たが、ちょうど良い時間にFカウンターに到着した。そこで航空券を受け取ったのだが、集合の気配がない。聞いてみると今日のこのツアーは、私達一組だけだという。何とも心細いではないか、笑っちゃいましたよ。こうして始まったハネムーン以来２５年ぶりというふたりの外国旅行。フルムーンの半分、そう、言うなればハーフムーンの旅行なのであります。
換金をして、これから１０時間吸えないタバコタイムの為レストランへ入る。そして２５年前に羽田の免税店で私の香水カボシャールを買っていたので、今回も成田で記念のカボシャールを、そしてネクタイを３本、タバコを２カートン購入し飛行機へ。
ノースウエスト７８便に乗り込む。座席が狭く前の椅子がすぐ目の前に迫ってきている。これじゃあ近頃話題のエコノミー症候群も頷けるというものだ。体中あちこち要精検の夫と無事帰って来られるか心配がよぎる。ホント。１４時４０分に飛び立って日本時間深夜２４時に着。ところがラスベガスでは朝の７時１５分と言うこと。これってまさしく時差のいたずら、疲れるっちゅうの。
＜マッカランの珍事＞
ラスベガスのマッカラン空港に到着。税関手続きをし、荷物を受け取る。外へ出ると、はたして「クラブ２１」のツアーコンダクターが見つからない。いわさきという名前をかざしている人がクサイとにらんで名前を言うがちがうという。オイオイクラブにじゅういちー。
さっきのクサイ人がやっぱり私達だと近づいてくる。しかしこのあと送り迎えを、他の旅行社の新婚さんと一緒によく面倒を見てくれた。街の説明をしながらそれぞれのホテルへ送り届け、その後、岸さんという人がホテルの中を説明してくれる。広いホテルを歩き回りレストランの場所や開いている時間、隣のホテルへの動く歩道のありか、バス乗り場、カジノを歩き回り、スロットマシーンのやり方まで。明日の予定も。旅で疲れている私達はそのまま２時間説明を受ける。しかも歩きながら・・お茶飲みたいよう。タバコ吸いたいよう。チェックインまでの時間稼ぎかあ。やっと解放され、ロビーで一服。とりあえずこのホテルのアトラクションを一つこなす。アイマックス劇場という3Dの画面を見るというもの。めがねを付けると立体的に見えて不思議だった。
＜ホテルルクソー＞
１１時になったのでロビーのカウンターでチェックイン、カード式のキーを受け取って、トランク受け取って初チップを渡し部屋へ。ピラミッドの三角の部屋ではなく、ウエストタワーの方だった。ホーッ、ツカレタ。このまま街へ遊びに行くにはちょっと疲れすぎと相談の結果、思い切って夕食まで休もうという結論になる。夫は風呂に入り、私はベッドへ入ってみた、しっかり寝ようと思いパジャマに着替えた。
５時間後、たっぷり眠った私たちは元気回復し、夕方の街へ繰り出す。来る前に「どこへ行きたいか、何を見たいか相談しましょ」と言っても時間がなく「まかせる」とか酒飲んで帰ってきて「もう寝る」とか言っていたので私一人で「ラスベガス」と言う本を読んで線引いたり、丸付けたりして予定を考えていた。というわけでメイン通りの一番先の方にあるストラトスフィアという高いタワーからラスベガス全体を、夜景を眺めて見ることにする。
タクシーで１４ドル、見渡す限りにライトがちりばめられている。その色も黄色に統一されている。昔の横浜元町のように通り一本だけにぎやかで後は砂漠の街と思っていたので、この大きさには驚く。ホテルからホテルの移動だけでも大変と聞いていたので、このタワーの中で食事をすることにする。下まで降りてきてしまったので、一階のカジノを通りレストランへ。私はワインとキングサーモン、夫はステーキとワインで食事。ここはサービスが良くて、３０センチの胡椒引きでサーモンにかけてくれる。シャカシャカ・・まだやっている、ちょっと長い。
「ストップ」
と言ってしまった私。
「サンキュー」
と言った方が良かったなと反省。英語が始まっている。とりあえずホテルルクソール方面へのトロリーに乗る。旅行社からチケットを１０枚もらっていたのでそれを使ってみる。黒人の運転手にチケットを見せて「ホテルルクソー」というと「O・K」と笑った。
路面電車風のかわいいバスに乗り込む。走り出すと車内の電気が消える。この通り沿いのホテルのネオンが浮き上がる、うまくできている。５〜６人のにぎやかな女の人が乗ってきた。笑いながら、しゃべりながら・・。運転手がマイクで何か話しかける。その中の女の人が答える。そして笑う。運転しながら歌を歌う。女の人たちが合いの手を入れたり、一緒に歌ったりする。運転手が歌い上げる。女の人があきれた様子でため息をつく。「今のは誰だ」と運転手がふざけて振り向く。「この人」と隣の人を指さす。そして皆で笑う。これって映画の中に入っちゃったみたいに楽しくてアメリカだなあと感じた。日本だったら、東急バスの○○さんがフキンシンとかって会社に言いつけられそう。
この時間この通りは混んでいることもあり、あちこちのホテルの駐車場を回りながら走るのでルクソーまで２時間もかかってしまった。でもいろいろなホテルの外観を見ながらだったので飽きなかった。ホテルへ着いたのは１１時半。シャワーを浴びて１２時半就寝。しかし今日一日の長かったこと。
＜グランドキャニオンの覚悟＞
今日は命を懸けた飛行機に乗る。グランドキャニオンへ行くのだ。落ちる可能性と、酔う可能性があって、ちょっと緊張している。そんなわけで私は夜あまり眠っていないのだ。部屋で子供達にさよならをしている最後写真も撮った。それでも７時にロビーに行く。昨日と違うツアーコンダクターが迎えに来た。又このホテルから一組だけである。でもバスに乗ると新婚さんらしい若者が３組いた。５分という近さの飛行場へ着くと、総勢２０名位の団体になった。
ゴルフ場のカートのようなもので飛行機に近づく、小型ジェット機の奥に翼が上についたいかにも落ちそうなプロペラ機が見え、それに向かって行く。こわいよー。それぞれが飛行機をバックに写真を撮られる。これって事故った時のための物なんだ、とさらに恐怖が増す。それでも乗りかかったフネ、いやヒコーキだ、乗るっきゃない。前の座席の背中にフクロが３つもあって、使ったら外へ持ち出せとか説明している。私は吐くことがとても嫌いだ。死んだ方がましだ。でも説明をしていた女の人がパイロットだったので少し安心する。操縦を女でも出来るんだ。いつもしているんだろうな、平気なんだ、大丈夫だ、と。でも夫と席が前後だったのでコワイヨーと顔を合わせる事も出来ず、加速して行く不安に一人で耐えるしかなかった。
チョロかった。飛んでみたら安定している。揺れもない。音は大きいがイヤホーンで説明や音楽が流れているので恐怖心はない。そしてだんだんグランドキャニオンっぽくなっていく景色に見いった。コロラド川、フーバーダム、耳では知ってはいたが、今、目の当たりにしていると言うことに感激していた。着陸の時は１・５メートル位下のタイヤが滑走路に着き、回りだす瞬間をしっかり見届けた。４０人乗りのバスが待っていた。私たちの後、２機の到着を待っての出発となる。ガイドの人が的確で簡潔で説明がとても上手だった。
だが展望台で話を聞いていたとき、ここから去年は３人落ちて亡くなっていると言ったので、私はつい
「エッ自殺？それとも事故？」
と質問してしまった。聞こえなかったのか流されてしまった。
「エッどっち？」
と思っていたら、そばの人が
「自殺はないだろう」
と言った。
「ああ、そうなんだ」
と思ったとき、説明もその場所に来たらしくて
「事故が２件、自殺が１件となっております」
と言った。
「フウン」
と皆で首を振って感心した。
＜リスの狂犬病の謎＞
ブライトエンジェル、ヤバパイポイントとバスで移動した。ここはアリゾナ州、ネバダ州のラスベガスとは１時間の時差があるということだった。フウン、アメリカって広いんだ。でも集合時間はアリゾナ時間でなく、ラスベガス時間でということだった。グランドキャニオンを眺められる絶壁にホテルがあってクリントンやヒラリーさんが年何回かそこに泊まるそうで、クリスマスの飾り付けがきれいにしてあった。ここなら泊まってもいいな。
プリンスホテルでバイキングの食事をとり、一服するため外へ出る。マクドナルドがあった。ホリディインというホテルもあった。そうそう、ここには小学校から大学まであるそうで、朝８時〜夜７時まで勉強するとか。遠いので授業が週３日とか４日しかないので時限数は増えるということらしい。こんな山の上まで来るなんてアー大変。ホテルのおみやげ売場で渋い柄のオカリナを２つ買ったんだけど、誰にあげようカナア、誰がほしがるかなあ。
ラバの話なんですが、雌のロバと雄の馬を掛け合わせてラバが出来た。そしてラバとラバでは子供は出来ないとか。不思議な話、よくわかりません。リスの話なんですが、「かわいい」と手を出さないように。狂犬病があるので医者代が高くつきますとか。リスがイヌとかってよくわかりません。
帰りの飛行機は少―し揺れました。エレベーター感覚がありました。でも私はもう平気です。ちっとも怖くありません。雲がわいてきて回りが真っ白になったけど、パイロットがさっきの女の人だし、大丈夫です。着地して空港へ戻ったら、さっき撮った写真がずらっと並んでいました。２０ドルで買って帰り、今テレビの上に飾ってあります。こういうことだったのねえ。一度ホテルへ戻って、薄着に着替えました。今日のグランドキャニオンはあまり寒くなかったようです。シャツ着てセーター着て、モモまでのモモヒキ履いていたからかもしれないけど・・。
＜３Ｄ三昧＞
２時にホテルに戻れたので少し休んで４時出発と予定した。夫はチョー薄着でスースー寝てしまった。私は絵はがき書きです。グランドキャニオンの感激を伝えたいと・・。
「ただ今まさにグランドキャニオン観光をしてきたところです。お天気もよく飛行機のコンディションも上々で楽しかったです。ホテルで一休みしてから夜の街へ繰り出すのです。破産しないように気を付けます。ルーレットやスロットマシーンその前にフリモントストリート、ミラージュ、ヴェラッジオホテル見学。行くとこたくさんあってママ困っちゃう。おみやげは期待しないでね。ホント。せんちゃん（夫）が起きない。もう４時なのに困った。ア、起きた。又寝た、もう」
なーんてかんじで４枚書きました。出発は４時と決めたけどフリーなんだからそこはまさしく自由。このホテルのアトラクションをこなしてから、友達が感激の涙だったというヴェラッジオの噴水目指して５時出発する。
その前にポスティングね。ロビーに行き、絵はがき見せて「スタンプ」と言えば場所を教えてくれると言う具合。自動販売機へ行く。５５セント、６０セントといろいろな切手があって迷う。また戻って絵はがき見せて、「ハウマッチ？」と言えば「オー」と言って、日本とスペインへの料金を切手スペースに書き込んでくれる。ちなみに全部５５セントです。ほんとにベリーサンキューです。無事投函し、ホテルルクソールの２階スペースにあるアトラクションのチケットカウンターへ・・登りたいのだがエスカレーターが見つからない。ホントに広いホテルなのだ。そこで又若い子供連れのお父さんをつかまえて、「セカンドフロアー、エレベータープレイス、ウエア」などとほざく。エレベーターが見えるところまで移動して教えてくれました。今改めて字で見ると日本語の並びだこと。逆に言えっていうのよ。「エクスキューズミー、ウエアリズ」は基本。
チケットカウンターでいくつかある内「じゃそれ」というと、「クローズ」と言う。どういう訳かは、ま、聞かないで、「じゃこれ」とオベリスクの探索に決める。少し時間があるのでそこら辺のショップを見る。エジプト関係のおみやげがいろいろ。ここはラスベガスのエジプトだから。ピラミッドの中を自在に飛び回るモーション・シュミレーター型ライド。先がとんがった物が目の前まで来たり、空中を飛んだり海の中へもビュンビュン入って行く。めがねを取ってみたら画面が何重にもぶれているだけなのに、なんという不思議でしょうか。日本の小学生に見せてあげたいと思った。映画はすべてこれでも良いじゃんなんて思った。
＜カジノ三昧＞
クラブ２１の岸さんが教えてくれたホテルエクスカリバーのバス乗り場へ行く。ここからただ券でヴェラッジオ方面へという企み。少し待ってもバスが来ない。停留所の印も見あたらない。エクスカリバーの人たちに聞いても「知らない」という。でも岸さんが言ってたしと翌日も何度か行ったのだが、最後までこのロータリーでバスを見かけることはなかった。フシギ。
カジノを通り抜けて表玄関からタクシーに乗る７ドルとンセント、「１０ドルOK？」[OK、サンキュー]とタクシーを降りる。チップって大変ね。この前にタクシーに乗ったとき、プラス１ドルで払ったら、「ノーノーノー」とか言われて、もう１ドル位足したら[OK]なんて事があったのだ。
キラキラ輝くミラージュへ着いた。フロントを抜けると熱帯植物であふれているアトリウムがある。まさに砂漠の蜃気楼、ミラージュだ。ホワイトタイガーの展示室があり、薄茶の虎が３頭、係員がボールなどを使って遊ばせていた。カジノを通りストリップへ戻る。ドドーンドンと音がして、火山噴火が始まっている。オオーッこれだと驚いたら静かな滝に戻ってしまった。あと１０分したら又始まるから待っていましょうと池の回りの手すりに寄りかかって待つ。新婚さんの写真撮ってあげたり、撮ってもらったりしながら・・。ドドーン、ドーン、大きい音がしてショーが始まった。火柱が高くあがってそれが溶岩流となってこちら側まで押し寄せて来る。滝なのにライトの赤と本当の火があってすごい迫力だった。
ストリップ通りを挟んで向かい側のベネチアンへ寄る。ホテル前の作りの豪華なこと。中へ入ってまたまた驚いた。天井が高く丸天井や壁をフレスコ画のレプリカが埋め尽くす。２階のショッピングアーケードになんと運河がある。そしてゴンドラが行き交っているのです。うっとりしたサクラかと思ってしまうようなカップル２組を乗せてオーソレミオを歌うゴンドリエの声がアーケードに響きます。天井は青空、まるでお台場ヴィーナスフォートです。
又通りを挟んで斜め前のベラッジォへ行く。２〜３個先のホテルだけど歩くと結構遠い。「見えていても歩くと３０分かかる」と最初の日説明されて「エエ、ウッソー」と言った私は本当だったんだと納得する。総工費２０００億円と言う贅を尽くしたホテルだそう。入ったとたんティファニー、シャネル、エルメスという専門店が目に入る。次女の友達のお母さんが卒業祝い、二十歳のお祝い、就職祝いにと、プラチナブレス、ルビーのペンダント、ダイヤのピアスなどを友達とお揃いでと下さるので私もティファニーのブレスをと思ったが値段を見てこりゃだめだと退散する。ブルガリの香水で許してね。
広い敷地の半分近くあるという池を探す。ロビーで例のブロークン英語で「ウォーターショー ウエア」「ウエア リズ」と始めろっていうの。レイクのアラウンドだと指さす。「サンキュー」。行ってみると人だかりがしていてショーが始まった。池の中には１０００を越える噴水口があり、７０メートル以上の高さまで噴き上がる水と光によるショーだ。水が人のように踊っていた。友達に勧められた「タイム トゥ セイ グッバイ」を是非見たかったので２〜３曲ねばった。１５分ごとなので一度中へ戻ったりしてカジノへ行ってみた。ちょっと本腰入れてたのがわかったらしく、ウエイトレスが来た。赤ワインを頼む。飲み物はタダだがチップを上げるようにと本にあった。
そしてコインがなくなった。でもワインがまだ残っているので札を入れた。カジノの酒の思うつぼだ。「タイム トゥ セイ グッバイ」を忘れてスロットマシーンが長引いた。でも５０ドルというところです。
食事はベネチアンでフィッシュフライとポテトとコーラという安上がりだった。チキンと間違えたのだった。そうそうここでもショーを探していて、又３Dを見たんだった。４部作で一部ごとに場所が変わるというもの。最初は女の子４人と私達、２番目はその内のふたりと私達、３番目は老夫婦と私達、４番目は私達だけ。客が少ない、子供だましか。ルクソールではシートは動かなかったが、ここでは椅子も揺れる。シートベルトをするのだ。でも、もう３Dには驚かない。
タクシーでルクソールまで戻る。４ドル７０セント、「６ドルOK」[OK]だ。食事が貧しかったのでサンドウィッチ、ドーナツ、ジュースなどを買って部屋へ行く。１１時半到着。軽食をとり、タバコ吸い放題、シャワーを浴びて・・グランドキャニオンから始まった今日も長かった。
＜エジプト三昧＞
何せラスベガスは夜の街、なのでゆっくり８時半起床。１０時発だ。エレベーターで外人さんと一緒になり「グッドモーニング」別れるとき「シーユー」と言い「バーイ」の方がいいよねえなーんてひとりで悩む。良いお天気で半袖Tシャツやお腹を出したタンクトップを着ている人とかもいる。まず、ルクソールを外から眺めてみる。スフィンクスとか２日いたけど見ていなかった景色がある。
ツタンカーメン博物館へ入る。エジプトの王家の谷で発掘されたツタンカーメンの王の墓を再現したもの、金箔の石棺、首飾り、武器などの副葬品。それらを見ながらカセットテープの説明を聞くという仕組み。「日本語ですね。みどりのボタンでスタート、赤でストップです。スタートという場所へ行ったらスタートボタンを」と説明を受け中へはいる。
スタート場所まで来てボタンを押すが、何も聞こえない。夫のは、少し巻き戻したら聞こえるようになった。「文句言って来よう、替えてもらおう」と言う私を夫は「いいよ、いいよ、やめよう」と言い、故障している私のカセットと取り替えてくれて進むことにする。私の方しか聞こえないので小さい声でブツブツテープの声をなぞって夫に聞かせる。とんだ苦労をしてしまった。でもカセットテープを返すところのおじさんに「サンキュー」と言って返したら、「ビューティフル」と言われた。そして、二度サンキューも何だから笑ってすませた。
おみやげコーナーでエジプト模様のアルバムを３冊買って出る。新品の１００ドル札なのでレジのおばさんは偽物？と透かして見ている。私が「ニュー」と言ったので笑った。アメリカの札は結構ぼろぼろだ。
＜ふんころがしブレス＞
二軒先のホテル、ニューヨークニューヨークへ行く。ここでも屋上のあたりをゴーゴーとジェットコースターが走っている。入り口の近くのコーヒーやさんへ入る。出てから気がつくんだけど疲れたりタバコ吸いたかったり、のどが渇いたらカジノへ行けばいいのよねえ。そういう習慣ないから椅子に座りたいと喫茶店を探してしまいます。スロットコーナーには「７年目の浮気バージョンのキュートな女神」がありました。外へ出るとアイススケートのショーを街角のステージでやっています。
ストリップを挟んで向こう側、緑色のホテルMGMグランドへ入ります。客室数もカジノの面積も世界第２位という巨大ホテルで誰でも一度は迷子になるそう。ここのスペクタクルショーの予約を取る。７時半からの分だ。チケットブースへもう一度行けと言われてもたどり着くのにはカジノを縦横歩き回らなければ行けない。ビルの中で雷が鳴っているおみやげやさんで変な物を買いました。野球のキャップを前後逆にかぶったところに、クルクルパーマのカツラが着いているという物。おもしろいと思ったが家に帰ったら不評。現品のみだったから１個だったけど、３個買うところだった。
ダウンタウンへ行くにはまだ早いので例の路面電車に無料チケットで乗ってシーザーズパレスへ言ってみる。ストリップ側からは長い動く歩道でつながっている。大理石の床に彫刻の像がたくさんあり、入り口のダビデ像、裸の男の像があり、その前で、外人の女の子達が一人一人写真を取り合っていた。ちょっと照れながら。ここで食事、セルフサービスで好きな物を注文してお盆に乗せレジでお金を払うという仕組み。アジアンフードコーナーでラーメンを見つけ食べたがまずかった。
シーザーズパレスはフォーラムショップへとつながっている。ここがお台場の元祖ということでビルの中なのに空があってそっくりだった。ここでエジプト物の「ふんころがしブレス」を１０個購入。緑色の色石が、かめ虫をかたどっているというもの。シーザーの時代の衣装を着た一団が一緒に写真に入ってくれるみたいなものに出会った。私はこういうのが好きだ。若い男の子がいたのでカメラを渡し撮ってもらう。シーザーがおいでおいでと手を振った。夫とふたりで５人ぐらいのきれいな衣装に混ざる。
ありがとうとカメラを受け取ったら、今度はその子達の番らしい。ふたりがシーザー側へ、１人がカメラを構える。
「あらあ、３人入りなさい」
と言ってその子達のカメラを取る。はずかしがって
「ぼくはいいです」
なんて言ってる。
「ハイハイ、行った行った」
シーザーもおいでおいでをしてる。そしてパチッ。
「どうもありがとう」
とうれしそうだった。よかったな。これだけ通じればいいよねえ。
日本語だか英語だか覚えてないけど。
＜万引体験＞
まずいラーメンで腹ごしらえもしたし、10ドルを払いタクシーでダウンタウンへ向かう。ストリップ沿いにあるホテルのきれいなカジノと違い、パチンコやのような雰囲気が少しあった。のどが渇いて足も休めようと又ドリンクショップを探して椅子に座る。カジノがあるっていうのに、椅子があって、タバコも吸えて、トイレもあるっていうの。
万引きチェックに引っかかる。おみやげ屋を見て、ペンダントヘッドのおもしろい形をいくつか選んで買った後、店を出ようとするとピンポーンとか音が。ン何の音？と思ったら警備員が寄ってきた。店へ戻れと。買い物袋をドアにかざすとピンポーン。
「中を見て良いか」
「どうぞ」
袋の中の、ある袋をかざすとピンポーン。
「これだ」
とショーウインドウにざらざらとふんころがしブレスを出す。
「ああ、これだ」
となにやら店の人と納得している。店の人が
「こっちへ来てごらん」
とレジの方へ私を促す。ふんころがしブレス１０個の内３個に、後ろに白い四角い物が着いていて、それをレジの機械にこすってこれでOKとか言っている。何の事やら、それを買ったフォーラムショップのミスらしい。とんだ初体験。
でも悪い事してないからこわくなかったもーん。
＜エクスペリエンス＞
ここ、フリモントストリートは天井のイルミネーションショーが目玉だ。４５０メートルのアーケード全体を使って１時間に１回、行われる巨大な光の祭典。２１０万個の電球をコンピュータ制御して映像を描き出す。私達が見たのは６時からのクリスマスバージョンだった。拍手が起きて「フリモントストリートエクスペリエンス」は終わった。帰りのタクシーに急いで乗らないと混むと判断した私達は、駆け出してさっき降りたホテルの前へ。そしてMGMへと急ぐ。この時の運転手さんは着いたときグルーッと回ってドアを開けてくれた。２０ドル払ったから？いつもは自分で降りて自分でしめるのにねえ。
＜スペクタクルショー＞
７時半からスペクタクルショー、EFX（イフェックス）を観るのです。今６時半だから食事をしましょうということになる。その前にイフェックスの場所を確認しましょうとカジノを歩き回る。スロットマシーンやゲームテーブルの間を縫って、アメリカンフットボール４面入る広さというカジノを歩き回る。でもこのフロアーにあるんだしちょっと聞けばすぐ分かるはずだからととりあえず「スタジオカフェ」というレストランへはいる。注文をすませて待つ。
１０分、２０分、隣の女の人たちがおいしそうなセットを食べている。それが終わったらメインとみられるステーキだかハンバーグだかが運ばれてきた。さっきのは前菜だったんかいと驚く、道理で太っているはずだ。
「あれだけ食べないと持たないんだろう」
と日本語で話す。そして３０分たった。忘れられていると思い催促する。
「マイオーダーは？」
「すぐです」
それから又５分。７時１５分、
「もうだめ」「帰ろうか」「うん出よう」
出口に行って訴える。
「マイオーダーノー」「ロスタイム」
などと言ったら
「コレデス」
ウエイターが厨房から料理を持って現れた。
「ノー時間がない、いりません」
すると
「ショーなら充分間に合う。食べてから行きなさい」
とズバリ当てられ、こういうトラブルに慣れていない私達は食卓に戻る。でもあと１０分で食べて場所捜して席に着かなくてはいけないのだ。心がはやり２〜３口、５〜６口食べてスタジオカフェを出る。レジのお姉さんにイフェックスの場所を聞く。すぐ左だった。こんな店をサンキューと言って出た私達。
飲み物付きのテーブル席はいっぱいだったので、後ろの席を取っていた。席へ案内される。場内は暗くてもう前座のようなものが始まっている。一瞬暗くなってショーが始まる。レーザー光線の稲妻が走り、巨大なドラゴンが火を噴きなんと２５０もの特殊効果が使われていて、８５キロワットのアンプと３００個のスピーカーを使った音響システムとのことでお腹に響く。アクション、ダンス、マジック、ロックンロール、3D映像と本当に盛りだくさん。疲れが出てうとうとして眠くてしょうがなくなった。一度起こされた。せっかくのショーなのに、ショーがない私。
あとは散歩しながらホテルに帰る。確か長い動く歩道があったはずなのに、もうホテルに着いてしまった。どこで乗れば良かったのか確かめてみようと逆から動く歩道に乗る。もうそうそう来るところじゃないんだから知らなくても良いのに、２つも３つも歩道を乗り継ぐ。ついでにマクドナルドでハンバーガーとチキンを買う。そしてルクソールまで戻ってビールとカルアミルクを買って部屋へ１０時着。食事をしてから、シャワーを浴びて明日の５時起きに備える。荷物も整理しておいた。１８億の夢はラスベガスに置いて行こう。
＜ロサンゼルス空港の茶飯事？＞
５時に起きました。空港までのバスの中、昨日は朝までカジノで遊んだという人が隣に座った。そうしなきゃいけなかったかと思ったが、結局儲けはなしと聞いてあきらめがついた。マッカラン空港を飛び立つとき、ルクソールは目立っていた。空港でシナボンとコーヒーの軽食を食べる。飛行機に搭乗し始めたとき「じゃ、わたしはこれで」とツアーコンダクターが言った。「ああ、この人はここまでなんだ」と思う。
ロスアンゼルスに着いた。みんなお迎えがいるのに、「クラブ２１」は見つからない。どこへ行けばいいのようとあせる。「ノースウエスト成田行きはこっち」とか言っているグループについて行くことにする。
「あの、失礼ですがこのグループの方ですか」
「違うんですが、お迎えが来ないもんで、ついていっても良いですか」
「良いですけど私達は研修ですので・・時間がかかりますよ」
「いいです。よろしくおねがいします」
ターミナル移動があった。バスに乗り２〜３駅。降りてたくさん歩く。ついてこなかったらたどり着けなかったでしょう。 ピンポンチェックに引っかかる。夫が通り抜けようとしたら、ピンポン。上着を脱げと言われる。ぬいでもピンポン。胸ポケットのライターが犯人だった。
そして免税店。最後のあがきでバックを見る。とにかく何でも良いから一つと思う。デザインがこれなら良いなと思うと、高い。これでいいか、でもこんなつまらないものじゃ、これならいいと思うと高い。もうやめた。香水を買うことにする。今これが新しいと説明してくれる人がいて、これも、これも、それからこれも人気です。じゃ、これとこれとこれ。そんな事してたら時間になってしまった。放送がありあせる。免税店って短時間しかいられないのね。駆け足で手続きをする。商品を受け取って、飛行機へ。
さっきの研修軍団の人が乗り込んできた。
「さっきはありがとう。おかげで乗れました」
「あ、よかったですね。」
私達の席は３人シート。夫の隣にラオス人。２５年前に日本語を勉強したことがある、税関の仕事をしていた人。おしゃべりなおじさんだった。夫と片言の日本語と英語で話していた。１２時間の飛行機生活はやはり疲れた。トイレの帰りに、後ろの丸窓の前でほおづえを付き、青空と下の方にあるモクモクとした雲を右から左へと見渡して、フムフムフムと納得しては帰ってきた。ずうっと昼間だったようで座席の方は、窓のシャッターがほとんど全部閉められていた。
成田空港へ着いてから家まで４時間かかって帰った。遠いよなあ。なりたあ。そして親ふたりがいっぺんに５日間も、家を留守にするのは初めてのことで心配だったが、姉の方はボーナス後の酒でオールするし、妹の方は友達と一緒に家でワイワイとか、充分羽を伸ばし楽しんでいたようだ。ま、いいか。
そしてルクソールから出した絵はがきが家に着いたのは、１１日後だった。fin
『２０００ソルシエール』「ハーフムーンウィズパープルマレタ」
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