フォトフィエスタ（江の電）
曇天の湘南へ電車を乗り継ぎやってきた。
車で海岸線を走る。正午を過ぎているのに人がいない海。徐々にちらほらと、波もないのにサーフィンをする若者が見え始める。夏はかもめ、冬はウミネコ、一年中空を飛んでいるのはとんびだそう。湘南といえば名物はガタンゴトンと海岸沿いを走る江の電だ。藤沢から鎌倉を結び、その特徴として線路に囲いはない。その線路をまたいでむこう側に行こうとしていたら、カンカンと音がして後ろの方から電車が近づいた。大急ぎで崖にある細い階段へ駆け込む。
その階段をかなり登る。左に墓が見える。狭い階段は木が生い茂りちょっと私の苦手な世界だ。でもミュリエルを先頭に右へ左へとシェリーもドンドン上る。結構きつい坂でしばらくぶりに外出をした私は息もあがっている。手を引いてあげようかといわれご好意に甘えたりしながら・・着いたところは・・見晴らしのよいイタリアンレストランでした。テラス席オンリーのこのレストランには暇な主婦のグループが3組ほど。やっととれた休日で来ている2人の忙しい看護婦さんと、そして暇な主婦の私は眺めがいい席に着く。スペイン旅行以来３人では初めて顔を合わせます。
「誤字を探したけど見つからなかった」
とスペイン総集編を見せた私に言ったシェリーの次の言葉は、
「文の題名はどう言う風につけるの」
です。曲が最初か詩が先かと質問されるアーティストの気分です。題はざっとつけておいて書き始め、出来あがった時に文の中から適当に探す、と答えましたが、文と関係なくしかもインパクトのある題名をつけてみたいなあと考えていたところなのです。
「2000年ソルシエールってどう言う意味？」
それはフランス語で魔法使いっていう意味よ。2001年はウィザード英語で魔法使い・・2002年はシャーマン呪術的職能者・・2003年はペルピニアン、タロットカードをする人と説明する。
「本に載せてるのがあるけど」
年に３回発行されるのよ。文の最後はタロットカードの言葉でしめるようにしていたの。
「意味わかるの？」
うん、タロットカード持ってるよ。
「わあ、占って占って」
と言われる。私はどんな人と結婚するでしょうか？今何歳の人？そしてそれはいつ？幸せになりますか？そんなことをわかるもんなら教えてほしい。切実に知りたい。街角でまたは“新宿の母”に並ぶ悩める女の子たち。二人とも占って欲しいことがある年代なんだと思う。 かねてより占い師になればいい、といわれている私は、転職というか天職として街角に立つ日近し・・か？
Fortune-tellingといわれる占い。horoscope星占い、やfloral language花ことば、そしてzodiac十二宮図、などは、世界各地で見られます。palmistry手相、pyhsiognomy人相、onomancy姓名判断、a
written oracleおみくじなどは日本でのみ商売として繁盛している占いのように思われます。これらの占い師たちは、夜の盛り場であちこちに見られます。さてどれにしましょうか。しかし口下手な私はとりあえずタロットカードの勉強を掘り下げておくとするか、でとどまる。
『聖家族教会サグラダファミリアを見渡せる通りの広場で、えらくおいしいエラード（アイス）を食べた。その時グエル公園の広場で買ったペンダントの石が落ち、コンコンという音がして消えました。いくら捜しても見つかりません。帰りも捜したけれど見つかりませんでした。でも、植木の陰から、ベンチの椅子のくぼみから、どこかから、この景色を一生見ていられる紫の石はある意味幸せ者でしょう。そう思える私も幸せ者でしょう。まるで星の王子様の５億の鈴のお話のように・・。』
『ｓｐａｉｎ』「エスパーニャ２００３全１２話」３話目。 ここが気に入ったといわれる。ミュリエルも「星の王子様」は読んだことがないので読んでみようかなと言っていた。私は大好きな本で読むと涙が出るよと勧めた。
テラスレストランでピザ、リゾット、魚のサラダ、しいたけのペーストをバゲットに乗せたものなどを食べて、ワインからカプチーノまで終わったので、そろそろ移動しましょと席を立った。店員さんに写真も沢山撮ってもらったし、今度は墓を右に見ながら急な階段をこけないように気をつけて下りる。
海沿いをほとんど駅まで戻りミュリエル宅へ行く。あのジャスミンの花が迎えてくれたのには感心した。スペインのメルカディージョで購入して、日本へ持ち帰ることができるのかと心配していたのに、荷物があんなにたくさんあってちょっと無理かも、と思っていたのにしっかり持ち帰り、ミュリエル宅にそれはありいい香りがしていた。
ケーキをいただきながら、写真披露、拝見。渡すものやもらうもの（オリーブ漬け、ギター運び代金、おみやげ）などを交換し、再度の焼き増しなどを頼んだり頼まれたりして３時間を過ごした。これは店ではできない作業です。看護学校の途中から引っ越してきたというミュリエルのアパートは、なぜか懐かしいような気がした。世田谷にあった私の新婚さん時代と同じような間取りだからだと思いついた。
写真を見ながら、何度も足がつりそうになって立ち上がる私を見かねて、椅子を用意してくれた。ひざや足首がつりそうになる。土踏まずまでつりそうになった所で気がついた。江ノ電を越えて崖を、急な階段を登ったせいだ。そして影響が出ているのはやはりわたしだけだ。
小雨が降り出した街を、魔女ワンピを着た私は車から駅舎へと走った。
「うーん、彼女たちの若さにはまいった」と心で言いながら・・（なあんてね）。
「アマルフィイ・デラ・セーラ」のテラス
右側は全〜〜〜〜部海です。