サルー（出会いと別れ）


 

　サルー！とグラスをかかげる。
　「楽しき出会いを、楽しき別れを」
　それは、魔女の乾杯から始まった。

「今日は夏のような一日となります」
という天気予報は信じてはいけない。夕方からすごい風が出てきた。吹きっさらしの待ち合わせ場所で髪が顔にまとわりつく。ひとりふたりと集まって来る人も震えてやっと捜した物陰に入る。
そこへ幹事が登場し、ひとりが駅を間違えて遅れてくると言う。先に店に行き待つことにした。幹事が駅まで迎えに行った人もじき到着し全員集合する。

　「楽しき出会いを、楽しき別れを」
　再度、魔女の乾杯から始まった。



そこで足がつった。『ペルピニアン２００３』「フォトフィエスタ」（江ノ電）に続き、又だ。この頃よくつるようになった。トシという知らせなのかもしれない。それになにか栄養が足りないのかもしれない。それはあまり食べない私に、いかにもさもありなん、だ。座敷に座っていられない。席をかわってもらい足を投げ出す。それでもダメで、立って足踏みをする。なかなか座れない。

前回は急な斜面を江ノ電に追われ登ったからだが、今回は買い物をした為、デパートを歩き回ったせいと思われる。たまの遠出だし（4駅）、それに今日は次女のバースデイプレゼントと義弟のお見舞いと母の日プレゼントと項目が多かった。午前中には仕事もこなしている。その前には早起きもしているという珍しいパターンなので体も驚いたのかもしれない。

低い椅子を勧められる。それに座るわけにはいかない・・と思う。つったわけではない。つりそうでつらない状態がつづく。皆それぞれがするこの半年の話を足踏みをしながら聞く。それでもこの座敷の珍しい調度品をデジカメに収める作業はする。



「毎回ここでやろう」
近所だったら毎日来ると言った人が言う。駅を間違えて２０分遅刻した人が言う。「かかや」というアンティークなものがたくさんあるお店で家庭料理をいただく。まずは白子入り豆腐だ。次は馬刺しだ。次はゴーヤと卵の炒め物だ。
筍の揚げ物、春菊のサラダ、とびうおのから揚げ、ゆで豚肉にソースがけ、そんな家庭料理が大皿でどんどん運ばれてくる。最後はしそやゴマをまぶした大きいおにぎりが・・。お持ち帰りの容器も用意される。皆で分け合って持ち帰る。さすが主婦連だ。




さっきの強風もおさまった町へ繰り出す。
ここは昔仕事をするためにみんなで集まった町だ。かれこれ１０年前になる。主婦達はあの頃、子供の教育費にあえぎ、家計を助けるため、将来の不安に備え、又は優雅な生活を夢に見て、短い休憩時間の楽しみを見出して、毎日通った。しばらくぶりでこのメンバーと歩くこの町も、大分様変わりしている。この町で会い、この町で又別れ、それぞれの生活に戻っていく。

「楽しき出会いを、楽しき別れを」
そう、魔女の乾杯だ。



楽しき別れをするその前に・・。
駅のお兄さんに、計画通り、予定通りつかまった。案内されて久しぶりのカラオケへ寄る。今日のまりあの代表曲は、金妻の主題歌「恋に落ちて」だ。英語がいっぱいだが無事こなした・・つもり。

犬を飼い元気を取り戻した彼女が、４番目の幹事を引き受けることになり、張り切っている。
次回は八王子で１０月と決めた。