スパイダーネット
スパイダーネット（蜘蛛の巣ショール）
私は彼女の特技を見出してショールを頼んでいた。蜘蛛の巣ショールもどきはグレーの麻糸で出来ている。蜘蛛の巣柄をイメージしてという変わり編みだ。ブローチ付きのそれはどんな服にも似合いそう。夏でも冬でもよさそう。ひざかけにもなりそう。糸代にもならないくらいのお礼を渡すと彼女は喜んでくれて親の写真の前の箱に入れた。前回のレッグウォーマーに続き今回は彼女レーベルのラベル付きというハンドウォーマーと帽子のセット３色をそれぞれいただく。手作りのものをプレゼントできるっていいなと思う。相手を思い作っている時、もらった相手はその人に感謝をし、いいことづくめだ。私は何も作れない。人に渡して喜ばれるものを作る技術がない。そう言うと「文があるじゃない。エッセイがある」とこの頃言われるようになった。「それは、そうか」と思うけど・・ので・・又この日を文にしようと・・今・・している。
前日の買い物話
買い物に行かない私はサーモンマリネ用の材料購入を夫に頼んだ。私の好きなサーモンのパターンは２ｘ５センチの四角いかんじで筋がないものだ。夫が買ってきたものは、今考えればサーモンらしいと思えるペロッとしっぽがあるような流線型のサーモンだった。私は困ってしっぽを切り厚い方だけを使うことにした。筋があるのでそれに合わせて切っていたらぶつぎりのようになってしまった。友達に披露するので美味しく作ろうと思うとへんなことをしてますますへんなことになるものだ。玉ねぎをさらすだけでいいのに塩をふってみた、塩もみしてみた、とかさらに塩を落とさないで先に進むとか。水気を布巾でふかないでぎゅっと手でにぎり量は減るしどんどん変になる。スーパーの販売員数人を動員して入手したというケーパーを入れたら見た目はさまになったけど・・・。
前日の眠れない話
いつもより少し早い深夜３時に寝た。いつもと違うことをすることは良くないことは知っている。やっぱり眠れず４時になった。起きて居間へ行きテレビを点ける。オリンピック前の試合をしている、青木佐保理、伊調姉妹などのレスリングを１時間見て感心し寝る。
当日の話
朝になり、結局睡眠時間は２時間半で起きる。風呂に入り支度をする。「早すぎるだろう」と言われるが、近頃の中央線事情『2008セイレーン』「雨の品川」（同窓会）もあり、早めの待ち合わせにも慣れてきて「もう出る」と言う。夫が一つ先の駅まで送ってくれると言う。それは電車にも乗らないし買い物にも行かなくなっている私の、心理的にも体力的にも非常に有効だ。電車で席に座れたのでゆっくりと本を読んだ。山本文緒の『みんな行ってしまう』の短編をいくつか読んでいたら、お茶の水駅あたりで貧血っぽくなった。本を読んだのはまちがいだったと思い目をとじたがすぐ神田駅に着いてしまい、着いてしまったので電車を降りる。
人に押されて歩くが足が宙に浮いているようで階段を降りながらも倒れ場所を探す。駅の中にある喫茶店に入ろうか、それともこの通路か。時間の余裕があってよかったと思いながら階段をホームまで上がれた。上がりきった途端電車が来たので乗り込む。鴬谷駅に着いた。
鴬谷駅での話
ホームにベンチがあったのでしばらく座り落ち着く。いつも上野までは来るがこの駅へ降りるのは初めてかもしれない。線路の向こう側にあるきれいな緑をしばし眺めてから階段を降りて改札へ行く。待ち合わせ時間５０分前に着いた。もちろん誰も来ているわけもない。そして５分前になって私はすこしあせりだし連絡を取ろうと思った。
彼女Ｔは「早く着いたのなら電話をしてくれればいいのに」と言ってくれたが、電話をしても通じないんじゃないかと心のどこかで思っていて、待ち合わせ時間がくれば会えるのだからそれまでがんばろう、とか潜在的な思考があったのかもしれない、駅で５０分を過ごした。ほんとは赤い神社の囲いが見えたのでそこらへんを一周してみた。それでも５分ぐらいしか時間はかからなかったと思う。ラブホテル街だった。
①携帯電話番号にメールを送っていた。②アドレスに電話していた。③家電にメールを送っていた。その混乱をなくすためアドレスの管理をしましょうとティファニーブルーのアドレス帳を買った話を書いていた。その原稿を書き終わって送るばかりになっていたのだが、そこに今日の待ち合わせ状況をプラスして再考し脱稿としよう・・・・・リンクしている場所は『ＫＥＣ』２７号「ティファニーブルー」（※近日公開）です。
彼女Ｔ宅へ
一人暮らし２５年という彼女の家は、駅から近いマンションの６階だった。小さくてかわいいものがたくさん飾られていて、絵を描くのが趣味で旅をしたお土産などがあり彼女らしさが出ている家だった。籐のソファーセットがあるダイニングで昼食をいただく。一人暮らしを楽しんでいるなあと思う。でも皿がない。親兄弟友達などが来ることはないので、と、食器は必要最低限あればよいらしい。タッパーのままでサーモンマリネ、夫の作った茎ワカメの煮もの、をつまみながらワインを開けた。オープナーもワインを飲まない彼女宅にあるわけもなく持参してきてよかった。それらでバッグの重みは尋常ではなかったのだが。
ＯやＫが持ってきてくれたお菓子やケーキや大きい桃やらのお土産攻めでＴは感激しあせっている。こんなに食料が増えることは、節約しながらの一人暮らしにはないことなのかもしれない。「テキトーでいいんだよ」と言われながら「もういいかな」などと時間を計って麺をゆでている。トーフやわかめやトマトやたまねぎやシソが入った豪華な冷やし中華は非常に美味だった。電話の位置を知ったＫは、これから電話で話している時Ｔちゃんはここで話しているんだなって思えると言っていた。私の提案を快く受け入れてＴ子さん宅に４人が集まったことをうれしく思います。ありがとう。Ｔ子さん！
あさがおまつりへ
広い通りの片側は、朝顔夕顔の鉢がどこまでも並んでいる。鬼子母神の神社で折り返し、こんどは屋台が並ぶ反対側を歩いた。夏の海で肌を焼く日の暑さを思い出していたら、やはりその日関東甲信や北陸、東北などの梅雨明けが気象庁から発表された。『１９日は、夏本番を印象づける暑い一日となった。熱中症を訴える人も相次ぎ、読売新聞の集計では、全国で４６７人が救急車で病院に運ばれた』などと。
彼女たちはさすがに日傘や帽子を持っている。帽子だけの人、傘だけの人、それらを組み合わせて持っている人。さらに私以外３人共が扇子を持っていた。私は外出の極意である冷房対策のショールはもっているものの、本日、傘、帽子、扇子は持っていない。すっかり外出をしなくなった私は、夏の暑さにも通りで配っている団扇をもらいながら『負けた』と思う。本心は・・・私は帽子が似合わない。日傘をさすほど太陽がきらいじゃない。ではあるのだが・・・。
帰り道は、鴬谷駅か、上野公園を歩き上野駅か、いう選択肢があり、「上野がいい」と即答した。歩き始めて足がつりそうにもなって２５分は歩けないと思う。「やっぱり８分の鶯谷で」と言う。彼女Ｔが疲れていそうでもあり、あさがおまつりのために彼女を家に残して少し横になるという話にもなっていたので、いくら「大丈夫」と言っても、やっぱり無理はさせられないとも思ったのだった。トシをとると体調はすこしづつ悪くなっていくので若い時のようにはいかない。配慮をしゆとりが必要なのだ。
私は今日の朝、薬をちゃんと飲んできた。