メシアス（スペイン語：救世主）
「さっきから不思議だなと見ているんだけど・・」
とシェリーが言う。
そう言われて見てみると吸い込まれるように女の子が入って行ったところだった。
凝った洒落た店の名前が並ぶこの通りには、その中に純日本風の名前もぽつぽつある。そのコントラストがなかなかよい雰囲気だ。東京、銀座『プエルト デ パロス』の窓に行きかう人々。開放的なガラス張りのこの店と相反して秘密の階段のような謎めいた店もたくさんある。雨上がりの細い小路の中にもますます不思議な店はたくさん。そしてこの町はベンツが多いと指摘するジョーコ。
「あのビルに入ってしばらくすると髪がきれいになって出てくるのよ」
先ほどの女の子が吸い込まれたビル、そこに付いている四角いネオンサインを見上げていくと、４階に○○美容室とある。お店に出る前に寄る場所なのだろう。そう思ってみるとこの通りにはわけありの様子のカップル、同伴で店に出勤？という感じのふたり。携帯を持ち店を探しながら歩いている怪しげな人。白いシャツに黒いズボンで自転車に乗っているおにいさん、どこかのバーテンかホスト？長いエプロンをしていたというから厨房に勤めているのだろうか。会社の宴会でもあるのだろうかたむろしている人々。そして着物姿の女の人が通りここは銀座と納得する。
２年前ヘレスへ帰る為アルムニェカールで別れたっきりだったジョーコと会った。
『スペイン』「モラーダボルサ☆２００３（カスティージョ（城）」
２年前スペインから帰り江ノ島で食事をしたきりだったミュリエルとシェリーに会った。
『２００３ペルピニアン』「フォトフィエスタ」（江の電）
席についてお料理の注文から店内にはスペイン語があふれています。このテーブルだけ？
それは『２００３ペルピニアン』「エル カスティリャーノ」でのこと。
１４日に又スペインへ帰るというジョーコと会った。
注文をとりに来た人は外国人でスペイン語を話す。ジョーコはそれを受けスペイン語で注文をする。驚いたその人に「彼女はスペイン語の先生だ」と教えた。質問したり冗談を言ったりしながら注文をする会話を、ジョーコの生徒だったミュリエルはきっと全部理解している。アンダルシア風バレンシア風などと説明しているその人がかっこいいとシェリーが言う。きっとボリビアの人だ、などと決め付ける。私もふたりのスペイン語の空間はとてもかっこいいと思うと言う。
今回はミュリエルが探してくれた『プエルト デ パロス』。 カーニャ（ビールサーバー）を置いたバールカウンターがあるスペイン料理のレストランだ。コロンブスが新大陸発見の旅に出て最初の港、その名前が店の名前となったとか。
「このアセイツゥナは４種類の場所のものが入っているのです」
と言いながらテーブルにオリーブの皿を置いたボリビア人に「?Pued
fumar aqui?（ここで煙草を吸ってもいいですか）」と聞いてみた。Si por favor.（いいですよ）と来るかと思ったら「ノ、だめです」と言われる。
今はスペインでもレストランやバルまでもが禁煙になっているとジョーコは言う。時代は禁煙ムードだからなあと思った途端、ボリビア人がセニセロを持ってきた。「これがない時はだめだけど、これがあればオーケーです」などと言う。だまされた。セニセロとは灰皿のこと。ジョーコにもらった「一本の白いバラ」と私がスペインで吸っていたタバコ、箱入り「Fortuna」は大切に家に持ち帰った。
シェリーと通りの人々の観察をしていたら、ミュリエルとジョーコはジェルバブエナというモロッコ茶の話をしていた。二人は一緒にポルトガルにも行ったことがある。スペインから橋を渡るだけで国境が越えられるという。ここ一年もスペインに行ったきりだったというジョーコはビザが切れる前に外国に出ると言う。そうすればずーっと海外にいることができるということだ。いつもは黒づくめのジョーコだが、今日はシャツの上に薄いトップスそしてスパッツ上にスカートと全部が白づくめだった。そして大きなサングラスをはずしながら待ち合わせ場所に来たのだった。
今へレスに住み、アカデミアに通いフラメンコ三昧の生活をしているそうだ。ご主人の方が仕事でしょっちゅうスペインへ来てくれるので単身赴任の逆をしていると言った。藤沢のレーナの近況、近頃結婚出産をし今子育て真っ最中というオリビアの話などを聞き驚く『２００２シャーマン』「イブ・ドローム」。
ここでバゲットのおかわりをする。スペイン語でなんていうの？とシェリー。
「ダ メ パンよ」とジョーコ。
「ダメ パン・・ダメパンって・・」『エスパニョールレッスン』「レッスン1１（レストラン）」
スペインのアルムニェカールに家を持つジョーコが言う。小さい町だけど近頃は避暑地としてかなり繁栄してきていて、街なんか大分変わったよと言う。スペイン語がペラペラの東洋人はめずらしいらいのだろう、この頃よくテレビに出ていると言う。なんとかって祭りを紹介するコマーシャルみたいなものもあったと言う。フラメンコの振りをしながら
「リンゴを取って食べて捨てる・・ここでせりふを言う。リンゴを取って食べて捨てる・・」
などと説明してくれていたら、ボリビア人が寄ってきた。呼んでないって。
でも一番初めのテレビ出演はそう、あの時だと思う。ミュリエルも言う。
「エウヘウニオがビデオに録画を重ねて壊しちゃったあれよね」
＜ソフトクリームでテレビに＞
明日の美容院の予約をした。ジョーコに驚かれたけど日本から計画していたのだ。髪をこれくらい切ってこのようにパーマをと注文を伝えてくれた。広場を歩いていた。ソフトクリームでも食べましょうと買っていたら、スペインのテレビ局が撮影をしていたらしく、「もう一度この広場を歩いて下さいって言っている」と通訳よろしくミュリエルが言う。「どうする？」「いいんじゃない？」「そうね、いいよね」４人で歩く、ソフトクリーム食べながら。放送されたらビデオ送ってくれるってミュリエルと約束。ウワア タノシミ。『スペイン』「パープルマレタ１９９９」(９月８日⑥グラナダからアルムニェカールヘ)
「どうも５０肩らしくこのごろ腕がここまでしか上がらない」
とジョーコが左手を上げたら又ボリビア人が寄ってきた。
まりあの50肩については『２００３ペルピニアン』「ツル」、
と『２００３ペルピニアン』「ツル２」を見ていただきたい。